社会学年報
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論文
教育達成の規定要因としての家族・きょうだい構成
―ジェンダー・出生順位・出生間隔の影響を中心に―
苫米地 なつ帆
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2012 年 41 巻 p. 103-114

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抄録

 本稿では,教育達成を規定する要因としての家族およびきょうだい構成に着目し,教育達成に格差が生じるメカニズムの一端を明らかにするため,マルチレベルモデルを用いて分析を行った.分析の結果,家族属性変数を統制した状態でも女性は男性に比べて教育達成が低くなることが明らかとなり,きょうだい内におけるジェンダー格差の存在が確かめられた.出生順位に関しては負の効果がみとめられ,きょうだい内で遅く生まれると教育達成が下がることが明らかとなった.加えて出生間隔も負の効果を持っており,きょうだいと年齢が離れている場合には,高い教育達成を得やすくなる環境や,それを獲得するための情報資源が存在しないことが考えられる.また,長男・長女であること自体は教育達成に影響を与えないが,長男の場合はきょうだい内に男性が多いと教育達成が低くなる傾向があり,長女の場合には,次三女に比べて家庭の社会経済的地位の正の効果を受けやすいことがわかった.このように,きょうだい内における教育達成は,家族属性要因と個人属性要因の交互作用の影響も受けているのである.さらに,母親が主婦である場合に子どもの教育達成が高くなることが示されたが,これは母親が大卒以上の主婦である場合に顕著であり,高学歴の母親が子どもの教育達成を高めようとしている可能性が示唆される.

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© 2012 東北社会学会
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