社会学年報
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41 巻
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特集「現代社会における公正と承認」
  • 正村 俊之
    2012 年 41 巻 p. 1-3
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
  • 阿部 晃士
    2012 年 41 巻 p. 5-7
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
  • 白波瀬 佐和子
    2012 年 41 巻 p. 9-21
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,世代と世帯に着目して実証データ分析から高齢層の経済格差のメカニズムを検討することにある.本稿で分析するデータは,厚生労働省が実施している『国民生活基礎調査』である.議論するトピックは大きく3つある.第1に年齢層内と年齢層間の経済格差,第2に暮らし向き意識,そして第3に高齢の一人暮らしの配偶関係に着目したライフコースの影響,についてである.
     高齢層においては三世代世帯が減少し一人暮らし,夫婦のみ世帯が上昇した.さらに,社会保障制度も1980年代半ばから2000年代半ばを見る限り,特に高齢女性の一人暮らしの経済的な底上げを促したことが,高齢層内の経済格差の縮小へとつながった.一方,昨今の晩婚化,未婚化の中,若年で世帯を構えることが少数派となり,若年労働市場の冷え込みも相まって,経済的困難を抱える若年世帯が増えた.その結果,年齢層間の経済格差は,若年層の相対的な経済水準の低下と高齢層の経済水準の上昇から縮小された.しかしながら,ここでの経済格差の縮小を良しと評価できるほど,日本の格差問題は簡単ではない.世帯主の暮らし向き意識は,一貫して悪化する傾向を示し,離婚経験のある高齢一人暮らしや母子家庭に極めて高い貧困率が認められた.そこで最後に,これまでとは違った生き方(ライフコース)を呈した者に対して社会的承認が不十分であることを問題提起した.
  • ―不法占拠と3.11大震災における「剥き出しの生」をめぐって―
    金菱 清
    2012 年 41 巻 p. 23-33
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
     本稿では,現代社会における「公正さ」について,単に近代国家の法律制度の枠組みへの位置付けだけでは公正性を保証できていないことを指摘したい.そのうえで,周りから不公平ともいえるものが実は逆に現代社会の公正性を担保することにつながっているという社会的事実を提示する.
     拙著『生きられた法の社会学』において大阪国際空港(伊丹空港)の一角に形成された「不法占拠」地域について,その歴史的な形成プロセスと人々の生活の内実,そして,住民と伊丹市と国との交渉をとおして「不法占拠」が解消されていく経過を描き出した.そこで見出したものは,「剥き出しの生」を背負わされた人々の実践が実定法に包摂されない「生きられた法」を生成するとする「法外生成論」だった.法外におかれた人々の「エゴイズム」を排除するのではなく,人々の生活実践にこそ法の正統性の源泉があるとする主張は,グローバル化のもと,国家や市場から排除された人々が数多く生み出されている現在示唆的であると考えた.
     ただし,当初地震などの震災は,「生きられた法」からは除外していた.おもに阪神・淡路大震災を引き合いに出しながら,絶望的な極限状態の際に生じた公共性は,時間をおかず解消され,いずれ元の日常生活に戻っていく定点をもつという判断からであった.ところが3.11大震災において,「修正」を迫られる事態が発生した.むしろ「生きられた法」のなかに今回の大震災を含む方がしっくりくる.
  • ―公正理論の視点から―
    佐藤 嘉倫
    2012 年 41 巻 p. 35-37
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
  • ―母子世帯問題から考える―
    下夷 美幸
    2012 年 41 巻 p. 39-41
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
論文
  • ―家族資源の観点から―
    安達 智史
    2012 年 41 巻 p. 43-54
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
     本稿は,東海地方X市のA中学校におけるフィールドワークをもとにして,ニューカマーの子どもたちの学校適応(成績,逸脱行為,学校への愛着)のあり方に影響を与える要因について分析することを目的としている.その際,家族が有する諸資源に注目する.分析の結果は,両親の学歴に見られる教育資源だけでなく,家族に共有される文化的・関係的要素である成員資源が,子どもの学校適応に重大な影響を与えていることを示している.特に両親との同居や信仰が,家族のモラルの基盤や親の権威を強化し,子どもの規律能力を高め,学習への志向に寄与していることが明らかとなった.
  • ―宮城県登米市旧中田町在住M氏の模索を事例として―
    何 淑珍
    2012 年 41 巻 p. 55-65
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
     本稿の課題は,宮城県登米市旧中田町在住のM氏を事例に,旧中田町の農業とともに歩んできた彼の農業者としての生活史を振り返ることによって,農業,農村,農家が農業者の目にどのように映し出されているのかという農業観を明らかにすることである.分析手法としては,東敏雄が提示した「事実の発見」という「聞きがたり」の手法を用いて,一個人である農業者が彼の農業人生を取り巻く重層的な「社会的諸条件」にどのように向かい合ったのかを焦点に検討した.インタビューの結果から,農業,農村,農家がかかえるさまざまな問題に対して彼が模索しながら行動するという生活を送ってきたこと,また,農業の農業者自身,農村,日本社会での位置づけに疑問を持ちつつも,農業を維持存続させようと模索していることを明らかにした.
  • ―バークレー闘争を例に―
    小杉 亮子
    2012 年 41 巻 p. 67-77
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
     大学生を中心に若者による社会運動が多発した1960年代後半に対し,近年,社会的関心が高まっている.本稿は,今後,1960年代後半の日本の学生運動を検討する際の視座を導出するため,1964年にアメリカ・カリフォルニア大学バークレー校で起きたバークレー闘争の形成要因について,先行研究のレビューを通じて整理した.バークレー闘争の形成要因としてとくに重要なのは公民権運動である.公民権運動は当初のイシューを提供し,さらに公民権運動活動家だった学生を通じて,座り込みなどの公民権運動特有の戦略・戦術が導入されることになった.また,一般の学生たちが闘争に参加した動機には公民権運動への支持に加え,合衆国憲法が保障する政治的権利の学内での実現と「政治活動と言論の自由が守られる場」という大学像の追求とがあった.ただし,合衆国憲法に基づく権利保障の要求は,アメリカ社会における法と権利の重要性を活用した公民権運動の発想の延長線上にあった.この発想を基盤に学生の権利と学生生活へとイシューを展開させたことで,キャンパスの広範な学生を巻き込んだ運動が実現された.このようなバークレー闘争の形成要因は,1960年代日本の学生運動についても,若者の逸脱や風俗現象として捉えるのではなく,同時代の社会のあり方,とくに同時代の社会運動との関わりのなかから学生運動が形成された具体的過程を分析する重要性を示している.
  • ―デヴィッド・ハーヴェイの企業家主義的都市論からの批判的視座―
    笹島 秀晃
    2012 年 41 巻 p. 79-89
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
     創造都市とは,チャールズ・ランドリー,リチャード・フロリダらによって1990年代以降提唱されてきた,文化芸術を都市経営の中心に位置づけた都市ヴィジョンである.近年,世界各国の自治体では,創造都市のもたらす利益の可能性が信奉され,様々な施策が展開されてきた.他方で,2000年以降,デヴィッド・ハーヴェイの企業家主義的都市論に依拠しつつ,新自由主義の進展と共振する創造都市の問題が指摘されてきた.本稿では,創造都市に対する批判的先行研究を踏襲しつつ,創造都市の誕生をめぐるグローバルな政治経済的プロセスを明らかにすることを目指す.
  • ―学力と出身階層の効果に着目して―
    鳶島 修治
    2012 年 41 巻 p. 91-101
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
     本論文では,現代日本における教育期待の形成メカニズムの特徴を明らかにすることを目的として,中等教育段階における選抜と差異化の面で日本とは性格の異なる教育システムをもつアメリカおよびオランダとの比較検討を行う.日本では高校進学時に異なるタイプ・ランクの学校への進路分化が生じるが,本論文で対象とする中学2年生はこの選抜と進路分化をまだ経験しておらず,それゆえに国際比較の視点から見た日本の位置づけは明確でない.TIMSS2003のデータを用いた分析から,教育期待に対する学力の効果には日本とオランダの間に差が見られず,アメリカではこれら二カ国に比べて弱いこと,他方で,教育期待への出身階層の影響力は三カ国間でほぼ同程度であることが明らかになった.教育期待に対する学力の影響という面では,開放的な中等教育システムをもつアメリカよりも,むしろ「高度に差異化された教育システム」をもつオランダとの間に日本との共通性が見出される.近年のわが国では学力面での大学進学の制約が弱まりつつあるという見方もあるが,国際的に見ると,日本における教育期待の形成は現在でも学力の影響の大きさによって特徴づけられる.
  • ―ジェンダー・出生順位・出生間隔の影響を中心に―
    苫米地 なつ帆
    2012 年 41 巻 p. 103-114
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
     本稿では,教育達成を規定する要因としての家族およびきょうだい構成に着目し,教育達成に格差が生じるメカニズムの一端を明らかにするため,マルチレベルモデルを用いて分析を行った.分析の結果,家族属性変数を統制した状態でも女性は男性に比べて教育達成が低くなることが明らかとなり,きょうだい内におけるジェンダー格差の存在が確かめられた.出生順位に関しては負の効果がみとめられ,きょうだい内で遅く生まれると教育達成が下がることが明らかとなった.加えて出生間隔も負の効果を持っており,きょうだいと年齢が離れている場合には,高い教育達成を得やすくなる環境や,それを獲得するための情報資源が存在しないことが考えられる.また,長男・長女であること自体は教育達成に影響を与えないが,長男の場合はきょうだい内に男性が多いと教育達成が低くなる傾向があり,長女の場合には,次三女に比べて家庭の社会経済的地位の正の効果を受けやすいことがわかった.このように,きょうだい内における教育達成は,家族属性要因と個人属性要因の交互作用の影響も受けているのである.さらに,母親が主婦である場合に子どもの教育達成が高くなることが示されたが,これは母親が大卒以上の主婦である場合に顕著であり,高学歴の母親が子どもの教育達成を高めようとしている可能性が示唆される.
  • ―学校タイプによる傾向の違いに着目して―
    濱本 真一
    2012 年 41 巻 p. 115-125
    発行日: 2012/07/14
    公開日: 2014/03/26
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,公立中高一貫校の拡大に焦点を当て,その導入時期と拡大スピードに影響を与える要因を分析することである.中高一貫校を,中学校入学段階で選抜を行う「受験型(併設型,中等教育学校)」と選抜を行わない「連携型」に分別し,それぞれに対して人口的,地域的要因をイベントヒストリー分析およびマルチレベルモデルによって検証した.分析の結果,受験型一貫校設置に対しては教職員組合の規模が,連携型に対しては受験型一貫校の数が,その設置時期を遅らせる要因として作用しているということが分かった.加えて,それぞれの量的拡大の要因を分析した結果,受験型の拡大には私立学校の割合,他県への生徒流出,財政力が有意な影響を与え,受験型の一貫校が持つ生徒獲得の側面が明らかになった.連携型は比較的財政力の少ない県に設置され,受験型を設置できない地域の代替的な役割を担っているが,全国的に平原化しているということが分かった.受験型と連携型は現在補完的な役割を担っているが,受験型の増加と連携型の平原化の傾向から,今後中高一貫校が量的に拡大しても,地域による教育機会の格差が存続し続ける可能性が示唆される.
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