社会学年報
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論文
1960年代アメリカの学生運動の形成要因
―バークレー闘争を例に―
小杉 亮子
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2012 年 41 巻 p. 67-77

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抄録

 大学生を中心に若者による社会運動が多発した1960年代後半に対し,近年,社会的関心が高まっている.本稿は,今後,1960年代後半の日本の学生運動を検討する際の視座を導出するため,1964年にアメリカ・カリフォルニア大学バークレー校で起きたバークレー闘争の形成要因について,先行研究のレビューを通じて整理した.バークレー闘争の形成要因としてとくに重要なのは公民権運動である.公民権運動は当初のイシューを提供し,さらに公民権運動活動家だった学生を通じて,座り込みなどの公民権運動特有の戦略・戦術が導入されることになった.また,一般の学生たちが闘争に参加した動機には公民権運動への支持に加え,合衆国憲法が保障する政治的権利の学内での実現と「政治活動と言論の自由が守られる場」という大学像の追求とがあった.ただし,合衆国憲法に基づく権利保障の要求は,アメリカ社会における法と権利の重要性を活用した公民権運動の発想の延長線上にあった.この発想を基盤に学生の権利と学生生活へとイシューを展開させたことで,キャンパスの広範な学生を巻き込んだ運動が実現された.このようなバークレー闘争の形成要因は,1960年代日本の学生運動についても,若者の逸脱や風俗現象として捉えるのではなく,同時代の社会のあり方,とくに同時代の社会運動との関わりのなかから学生運動が形成された具体的過程を分析する重要性を示している.

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© 2012 東北社会学会
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