抄録
本稿の課題は,宮城県登米市旧中田町在住のM氏を事例に,旧中田町の農業とともに歩んできた彼の農業者としての生活史を振り返ることによって,農業,農村,農家が農業者の目にどのように映し出されているのかという農業観を明らかにすることである.分析手法としては,東敏雄が提示した「事実の発見」という「聞きがたり」の手法を用いて,一個人である農業者が彼の農業人生を取り巻く重層的な「社会的諸条件」にどのように向かい合ったのかを焦点に検討した.インタビューの結果から,農業,農村,農家がかかえるさまざまな問題に対して彼が模索しながら行動するという生活を送ってきたこと,また,農業の農業者自身,農村,日本社会での位置づけに疑問を持ちつつも,農業を維持存続させようと模索していることを明らかにした.