社会学年報
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特集「災害ボランティアの現状と課題」
災害ボランティア活動の展開と新たな課題
――支援力と受援力の不調和が生み出す戸惑い――
本間 照雄
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2014 年 43 巻 p. 49-64

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抄録

 本稿の目的は,東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県南三陸町を中心にして,被災地で見えてきた災害ボランティア活動の様相を取り上げ,災害ボランティア活動に関わる新たな課題について考察することにある.巨大津波で街を失った沿岸部被災地のボランティア活動は,阪神・淡路大震災以降積み重ねてきた活動とは異なる新たな課題に直面している.特に,長期間に渡って開設されている災害ボランティアセンター,漁業や農業への支援及び組織化されたボランティア団体と地元社会福祉協議会との連携・協働は,新たな不具合として表面化してきた内容と従来から現場で感じていた課題が重なり合い,東日本大震災から学ぶべき課題として,その具体的対応を迫っている.
 本稿では,これまでボランティア活動側に視点を置いた議論が多い中にあって,同時に支援を受ける側の力「受援力」の向上も併せて行うことの必要性を問うている.この受援力は,支援力と地域力を編む力と言い現し,支援力と地域力を編む力としての受援力を高めることで,被災直後の緊急援護から復旧復興期支援,そしてその先にある地域福祉へつながっていく支援を目指す力となる.このことへの着目は,東日本大震災で得た教訓を新たな震災への備えとして活かす道ではないかと提案する.

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© 2014 東北社会学会
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