社会学年報
Online ISSN : 2187-9532
Print ISSN : 0287-3133
ISSN-L : 0287-3133
43 巻
選択された号の論文の15件中1~15を表示しています
東北社会学会60周年記念講演
特集「災害ボランティアの現状と課題」
  • 高橋 満
    2014 年 43 巻 p. 31-34
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
  • ――「新しい近隣」の発見――
    吉原 直樹
    2014 年 43 巻 p. 35-47
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
     福島第一原発が立地する大熊町では,全住民の96パーセントが「帰還困難区域」に指定され,故郷を追われている.加えて,新自由主義的な復興政策の下ですさまじい勢いで「難民化」=「棄民化」がすすんでいる.にもかかわらず,東京に拠点を置く主流メディアは真実を報道することを避け,人びとの目をフクシマからそらすことに躍起になっている.避難民は,「忘却」という暴力にさらされたうえで,「絶望の共有」(shared despair)を余儀なくされている.しかしながら決してあきらめず,自らの生存と人権をかけた復興への道を模索している.
     本稿では,たえず組み合わせを変えながら横に広がっていく「関係としての相互作用」を通して,剥奪された場所を回復しようとする避難民の姿を,サロンを事例にして,「創発するコミュニティ」の展開をフォローアップしながら追う.そして旧来のガバメント(統治)によるトップダウンの「統制」(control)にも,市場を介して私化された関係による「調整」(coordination)にも回収されないコミニュニティの可能性について論じる.併せて,「コミュニティ・オン・ザ・ムーブ」を契機とするコミュニティ・パラダイム・シフトの方向性について検討する.
  • ――支援力と受援力の不調和が生み出す戸惑い――
    本間 照雄
    2014 年 43 巻 p. 49-64
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は,東日本大震災で甚大な被害を受けた宮城県南三陸町を中心にして,被災地で見えてきた災害ボランティア活動の様相を取り上げ,災害ボランティア活動に関わる新たな課題について考察することにある.巨大津波で街を失った沿岸部被災地のボランティア活動は,阪神・淡路大震災以降積み重ねてきた活動とは異なる新たな課題に直面している.特に,長期間に渡って開設されている災害ボランティアセンター,漁業や農業への支援及び組織化されたボランティア団体と地元社会福祉協議会との連携・協働は,新たな不具合として表面化してきた内容と従来から現場で感じていた課題が重なり合い,東日本大震災から学ぶべき課題として,その具体的対応を迫っている.
     本稿では,これまでボランティア活動側に視点を置いた議論が多い中にあって,同時に支援を受ける側の力「受援力」の向上も併せて行うことの必要性を問うている.この受援力は,支援力と地域力を編む力と言い現し,支援力と地域力を編む力としての受援力を高めることで,被災直後の緊急援護から復旧復興期支援,そしてその先にある地域福祉へつながっていく支援を目指す力となる.このことへの着目は,東日本大震災で得た教訓を新たな震災への備えとして活かす道ではないかと提案する.
  • ――福島第一原発事故の支援と復興を問い直すことから――
    山下 祐介
    2014 年 43 巻 p. 65-74
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
     本稿では,1995年に生じた阪神・淡路大震災と,2011年東日本大震災について,ボランティア・支援・復興の各側面における検証を試みる.95年阪神・淡路大震災はボランティア革命とも言われ,その後の日本の市民活動活発化の起因となった.今回の東日本大震災は,この市民活動領域の形成が市民社会を日本にもたらしたのかを知る機会であったと言える.本稿では,とくに福島第一原発事故をめぐる復興政策および支援活動の中でその検証を行う.今後,日本的な市民社会が形成されるための条件として,地方自治の確立,科学の適切な政策利用,これらをふまえた市民活動の政治的作動が必要になると議論した.
  • 相澤 出
    2014 年 43 巻 p. 75-78
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
  • 牧野 友紀
    2014 年 43 巻 p. 79-82
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
論文
  • 大井 慈郎
    2014 年 43 巻 p. 83-94
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
     本稿は,新国際分業と世界都市システムのなかでの,東南アジア都市の位置づけを明らかにするものである.今日,世界的な都市人口の増加とともに巨大な都市圏が形成されるなか,都市研究では,その構造的説明を目的とした議論が行われている.こうした議論では,とりわけアジア諸国を対象に論じられているが,なぜ他の途上国地域ではなくアジア(なかでも東南アジアと中国)が議題となるのか,という問題に立ち入っていない.そこで本稿は,先進国・途上国の現在の都市化・都市圏形成の議論,および各途上国の発展戦略に関する議論を横断的に分析し,東南アジア都市の位置づけを明確化した.その結果,他の途上国地域と異なり,工業製品輸出国という地位を獲得した基盤には,日本の近隣国であったという地政学的要因,それと関連するプラザ合意による通貨安と規制緩和といった世界経済的要因と,国内労働力の管理の容易さといった労働環境的要因とあわせて,人口分布とその土台となる工業化以前の農業経済システム的要因があったことを指摘した.
  • ――開拓初代女性の文化活動を事例として――
    何 淑珍
    2014 年 43 巻 p. 95-106
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
     本稿は,北海道の根釧パイロットファーム開拓事業によって入植した開拓初代女性の自発的文化活動を対象とした事例研究である.本稿の課題は,対象者が日々の日常生活において農業に携わりつつ家事育児をこなしながら,どのように自らの生活文化を形成させてきたのかを明らかにすることである.開拓女性の入植から今日に至るまでの生活史を追うことによって,根釧パイロットファームという社会的条件に,対象者はどのように向かい合い,結果的にどのような新たな社会的条件を作り上げようとしているのかを焦点に検討した.女性の文化活動が,家族経営である農家生活において,家族内人間関係の円滑化および生活,生産両面における家族生活の安定化を促進させた.そしてその活動が地域の同世代および世代間の交流の場と機会を提供することにつながり,結果的に地域に新たな生活文化が形成されつつあることが明らかとなった.
  • 三須田 善暢
    2014 年 43 巻 p. 107-117
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
     本稿では,日本農村社会学の先駆的業績と位置づけられる新渡戸稲造農業論の主著『農業本論』を中心に取り上げ,これまでの先行研究ではあまり論じられてこなかった点――特にモノグラフ研究法の手法と全人的な農民把握――に注目し,彼の思想の特質と農村社会学上の先駆性をあきらかにする.くわえて,現在からみての農村社会学に対する意義を示唆的に提示する.その際には新渡戸の提唱した「地方学」および彼の都市農村関係論,とりわけ“農工商鼎立併進論”,さらにはその基盤にある農民心理・性格等の分析に注目する.
     新渡戸は,当時の農民の心理,意識,道徳等を平等な人間観にもとづき全人的に把握している.それによって,中央集権的に上から教化しようとする姿勢から,一線を画すことができた.地方学にこめられた地域の自立を重視する姿勢の基盤には,このような,新渡戸の農民把握の姿勢が存している.そこには,当時の小農保護論の問題状況のなか,地方(農業)の担い手を自立的な農民にもとめていたことが関わっている.このことと,地方学の構想,都市工商業との関係,農工商鼎立併進論の志向は連関しあっているのである.こうした点において,新渡戸農業論を,いわゆる内発的発展論の系譜に位置づけることは可能であろう.特に地方学は,日本農村社会学のモノグラフ研究の系譜に位置づけるべきものであろう.
     新渡戸農業論は日本農村社会学その他の先駆的な位置におかれうるものだが,単に先駆的というだけではなく,専門分化していない時期のダイナミズムだからこその視角・着眼等を汲み取りえる業績といえる.
  • ――新聞報道を中心に検討して――
    佐久間 正弘
    2014 年 43 巻 p. 119-129
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は“いじめ”に起因して発生したと言われた事件の新聞記事を検討することによって,“いじめ”についての学校批判とその責任が,誰によって,どのような言葉と理屈を用いて語られてきたかを明らかにすることである.本稿では社会問題研究の対象として,問題とされる社会の状態に目を向けるのではなく問題とされる事柄をめぐる人々の活動に着目するという「社会問題の構築主義」を参考にする.検討する事件は1985年のいわき市の小川中学校での自殺事件である.この事件は全国ではじめて,裁判で学校の責任が認められた事件である.明らかになったことは第一に,“いじめ隠し”としての批判がなされたこと.第二は,いわゆる専門家などによって学校の不作為,いじめを防止する能力不足の問題が指摘されたこと.第三は,一般の人々は新聞記事を読んでこれらのストーリに沿いながら自らの経験や身近な子供もいじめの被害者になるのではないかという不安からクレイムを申し立てたことである.
  • 余田 翔平
    2014 年 43 巻 p. 131-142
    発行日: 2014/07/25
    公開日: 2015/08/24
    ジャーナル フリー
     本稿の目的は2点ある.第1の目的は,家族構造と子どもの教育期待との関連を記述することである.第2 の目的は,両者の関連を説明する仮説,すなわち格差が形成されるメカニズムを検証することである.そのような仮説として,本稿では経済的剥奪仮説,役割モデル仮説,家族ストレス仮説,セレクション仮説を取り上げた.
     中学3年生とその保護者を対象にした社会調査データを分析した結果,以下の知見が得られた.まず,初婚継続世帯の子どもと比較して,非初婚継続世帯の子どもは総じて教育期待が低い.非初婚継続世帯の中の差異に着目すると,死別母子世帯,継親子関係を含まない再婚世帯では,子どもの教育期待は比較的高い.他方で,離別母子世帯や父子世帯,さらに継親子関係を含む再婚世帯では,教育期待がいずれも低水準にとどまっている.また,多変量解析によって非初婚継続世帯の形成と関連する要因を統制してもなお,家族構造の効果は残されていた.本稿の分析結果はおおよそ家族ストレス仮説と整合的であり,子ども期に定位家族が安定的であることが教育達成にとって重要であることが示唆された.
執筆者紹介
feedback
Top