社会学年報
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小特集Ⅱ 震災復興の社会学
東日本大震災後における民俗芸能の復活
なぜ大曲浜獅子舞は年間45回も上演されたのか
相澤 卓郎佐久間 政広
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2017 年 46 巻 p. 45-56

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抄録

 東日本大震災後の早い時期に,被災した民俗芸能がつぎとつぎと再開された.先行研究では,こうした祭礼や民俗芸能の再開により,被災者が直面する困難への対処がなされていることが明らかにされた.しかし,それでは説明できない現実も出現している.2012年1月3日に復活した大曲浜獅子舞は,復活後数年間,震災前より格段に多い回数の上演が実施された.それは,この獅子舞が「被災者が全国から支援をうけて民俗芸能を復活させ,復興に向けて力強く歩みを進める」という物語を背負う「復興のシンボル」として扱われ,この物語が被災地の内外において求められたからである.獅子舞保存会に殺到する上演依頼に対して,保存会会員は,獅子舞上演を「被災地支援に対するお返し」と意味づけて応えた.保存会は,中学校時代に獅子舞指導を受けた先輩-後輩,同級生たちからなる仲間集団であり,会員たちは,互いに仲間としての関係を維持するために,可能な限り上演に参加した.

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© 2017 東北社会学会
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