2020 年 49 巻 p. 39-50
本稿は,経済領域において進行する社会・環境的な認証制度の拡大を「機能分化した経済システムの自己制御」という観点から説明し,現代社会における評価プロセスの普及についての一視角を提供することを目的とする.生産・取引をめぐる認証制度は,グローバルな流通の不透明性に対するリスク・マネジメントとして普及したが,それによっていわゆるリスク市場が形成されるとともに,その市場自体が経済の利害関心を制御するという一種の「自己制御」が働くこととなった.本稿は,ニクラス・ルーマンの機能分化論を補助線にして,認証制度が経済システムの自律的再生産と他の機能システムとの構造的カップリングを可能にしていること,そしてこの経済を支える評価そのものがこの経済システムの自己産出物であることを明らかにする.これが示唆するのは,経済の自律的再生産を支えているのは,市場化の徹底ではなくオートポイエーシスの徹底だということである.その意味でこの自己制御は,評価国家と呼ばれるような非経済領域に市場環境を疑似的に創出する新自由主義的統治とは異なる.新自由主義的統治はむしろ諸機能システムのオートポイエーシスを阻害しかねず,機能分化というよりも階層分化に属するものである.システムの自己制御を促進する評価プロセスは,それと区別されねばならない.