社会学年報
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49 巻
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特集「評価国家と社会・組織」
  • 機能的分化とその行方
    小松 丈晃
    2020 年 49 巻 p. 1-5
    発行日: 2020/08/30
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー
  • 強制・評価・誘導
    正村 俊之
    2020 年 49 巻 p. 7-20
    発行日: 2020/08/30
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

     現代社会では,21世紀に入って新自由主義的な改革が広く浸透するとともに,情報化も新たな段階を迎えようとしている.本稿では,現代社会のなかで進行している権力様式の転換と近代的自由の変質をメディア論的な視点から考察する.まず,メディア概念を拡張し,「伝達メディア/受容メディア/表象メディア」に区分したうえで,近代社会が,印刷物や権力といった諸メディアを基盤にして成り立っていたことを確認する.次に,今日のインターネットが単なる伝達メディアではなく,時空的秩序の再編を促す表象メディアでもあること,そして権力をはじめとする受容メディアの作動様式にも影響を及ぼしていることを述べる.そして最後に,このような変化が人間の自由にとってどのような意味を持つのかを考察する.

  • 堀口 真司
    2020 年 49 巻 p. 21-38
    発行日: 2020/08/30
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

     日産や東芝など大きな会計不祥事は,さらなる会計監査規制が必要であることを示唆している.規制の適切性や有効性に関する関心を生み出しているのは,まさにこのような一般的に受け入れられてきた理解である.しかしながら,規制を改善していこうとするこの政策志向的な関心は,会計がその規制対象領域と相互作用する様子には,ほとんど注意を払っていない.本稿では,「規制のトリレンマ」という分析枠組みを参照しながら,その相互作用について解説することを試みる.本稿の議論の構成は以下の通りである.第一に,戦後日本における重大な企業不祥事と,それに伴う会計監査規制の発展を示す.第二に,分析枠組みである「規制のトリレンマ」を理解するために,オートポイエシス・システムという概念について説明する.第三に,会計をそのオートポイエシス・システムの観点から捉え直し,それが規制対象組織と相互作用する様子を描写する.そして最後に,今なお会計が,一方の政策的要請と,他方の規制対象領域との間で,独自の規制のトリレンマ状況に陥っている事実を,日本の規制の文脈の中で明らかにする.

  • N.ルーマンの機能分化論を通じて
    畑山 要介
    2020 年 49 巻 p. 39-50
    発行日: 2020/08/30
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

     本稿は,経済領域において進行する社会・環境的な認証制度の拡大を「機能分化した経済システムの自己制御」という観点から説明し,現代社会における評価プロセスの普及についての一視角を提供することを目的とする.生産・取引をめぐる認証制度は,グローバルな流通の不透明性に対するリスク・マネジメントとして普及したが,それによっていわゆるリスク市場が形成されるとともに,その市場自体が経済の利害関心を制御するという一種の「自己制御」が働くこととなった.本稿は,ニクラス・ルーマンの機能分化論を補助線にして,認証制度が経済システムの自律的再生産と他の機能システムとの構造的カップリングを可能にしていること,そしてこの経済を支える評価そのものがこの経済システムの自己産出物であることを明らかにする.これが示唆するのは,経済の自律的再生産を支えているのは,市場化の徹底ではなくオートポイエーシスの徹底だということである.その意味でこの自己制御は,評価国家と呼ばれるような非経済領域に市場環境を疑似的に創出する新自由主義的統治とは異なる.新自由主義的統治はむしろ諸機能システムのオートポイエーシスを阻害しかねず,機能分化というよりも階層分化に属するものである.システムの自己制御を促進する評価プロセスは,それと区別されねばならない.

  • Steven Lukesの権力論の視点から
    佐藤 嘉倫
    2020 年 49 巻 p. 51-55
    発行日: 2020/08/30
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー
  • 医療分野での動向に即して
    田代 志門
    2020 年 49 巻 p. 57-61
    発行日: 2020/08/30
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー
自由投稿論文
  • 固定効果モデルに基づく男女比較分析
    木村 裕貴
    2020 年 49 巻 p. 63-74
    発行日: 2020/08/30
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

     本稿の目的は,性別役割分業意識の個人内変化の規定要因を検証することで,第1子出生による親への移行は性別役割分業意識にいかなる効果を及ぼすのかという問いを解明することである.日本社会を対象とした性別役割分業意識研究には膨大な蓄積があるものの,個人内変化に関する検証が十分ではなかった.本稿では,ジェンダー不平等が尖鋭化するライフイベントとして第1子出生による親への移行に着目し,性別役割分業意識として3つの指標を用いて検証した.パネルデータを用いた固定効果モデルの推定の結果,親への移行が性別役割分業意識に及ぼす影響として,女性においては狭義の性別役割分業意識と母親就労の悪影響意識を非伝統的な方向へ変化させる効果が認められた一方,男性ではいずれも効果が認められなかった.また,とりわけ女性における母親就労の悪影響意識に対する親への移行の効果は,第1子出生からの経過年数が増すにつれ線形で増大することが示された.以上の結果は,現代日本社会におけるジェンダー不平等の根深さを照射しているとともに,育児期の女性が性別役割分業に関するイデオロギーを相対化していくメカニズムを示唆する.人々のライフコースにおけるジェンダー不平等を捉えるうえで,親への移行に焦点化する研究戦略が有効だと思われる.

  • 小林 博志
    2020 年 49 巻 p. 75-85
    発行日: 2020/08/30
    公開日: 2022/10/28
    ジャーナル フリー

     本稿では,農協婦人部の機関誌的存在である雑誌『家の光』を通し,販売者である農協と,その対象購買層である農村女性の視角から,農協の生活購買店舗におけるスーパーマーケット化の進展について考察する.1950年代の生活改善運動を背景とする生活購買事業の進展は,1960年代に入り農協合併を1つの契機として,購買店舗のスーパーマーケット化へと進む.そして,1970年代に入り,Aコープとしてチェーンストア化されることで,購買店舗のスーパーマーケット化が進展する.この一連の過程からは,スーパーという新たな「システム」の導入による,農村社会における都市化の一端が示される.

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