社会学年報
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特集「西田春彦の計量社会学」
西田社会学の誕生と展開
見えない世界への探求
片瀬 一男
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2021 年 50 巻 p. 7-19

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抄録

 本小論では,西田春彦の計量・数理社会学の誕生と発展を学生時代から晩年に至るまで素描した.西田は学生時代に尾高邦雄の労働者調査に参加する中で,回答と態度の間にズレがあることに気付き,態度を一次元的に捉えるリッカート尺度に疑問をもった.この疑問への解答は,和歌山大学時代に交流のあった地域研究者・井森陸平の村落尺度の検討や,同僚の統計学者・池田一貞とのラザーズフェルドの読書会で学んだ潜在構造分析によって得られた.その後の西田はこの潜在構造分析や主成分分析法を主要な分析技法にして農業集落カードの計量的分析にいどみ,とくに全国規準と地域規準の違いを通じて,地域の農業集落の特性を明らかにしようとした.さらにファジィ集合論を社会学に応用する方策も模索していた.こうした西田の方法論を支えていたのは,潜在空間を数学的に構築して顕在的な回答や曖昧な現象の背後にあって「見えないものを見る」という強い志向性であったと考えられる.

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© 2021 東北社会学会
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