社会学年報
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論文
H. S. ベッカーの「アートの社会学」
「新しいアートの社会学」におけるベッカーの概念的影響
松田 大弘
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2024 年 53 巻 p. 113-123

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抄録

 本稿の目的は,H. S. ベッカーの『アート・ワールド』(Becker [1982] 2008=2016)に対する批判を検討しながら,彼のアートの社会学の特徴を明らかにし,「新しいアートの社会学」におけるその貢献可能性を示すことである.『アート・ワールド』は,アートを「人々の活動の産物」として位置づけ,「社会的」に構築されたものとして認識する.ベッカーは,こうしたアートの社会学の基本的視座を示した一方で,その議論は,「ポスト批判的」アプローチに基づく立場から批判的に検討されてきた.批判の焦点は,彼はアート作品やその制作における物質的資源などの「非人間」の行為者性を「人間」と同様の注意を払わず分析しており,さらに,その説明は社会還元論に陥っているのではないか,ということである.それに対して本稿では,『アート・ワールド』だけではなく,その後の彼の研究を考察し,彼の社会学は,アート作品や人工物などの「非人間」を分析の中心にする可能性をもっており,彼の議論に単純な社会還元論をみるべきでないことを示した.

 ベッカーの「アートの社会学」の特徴は,人間の活動と生成過程への一貫した関心と「プロセス」に注目するところにある.本稿では,これらを明らかにすると共に,新しいアートの社会学に共通する課題への概念的返答を試みることで,新しいアートの社会学におけるベッカー社会学の意義を提示した.

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