2024 年 53 巻 p. 5-15
緩和ケアは死を医療化した一方で,苦痛も医療化した.トータルペインの緩和を志向する緩和ケアは,地域や在宅で,適用範囲を積極的に拡大し,支援の新しい取り組みを創出している.そうした事例のひとつである医療法人心の郷 穂波の郷クリニックは,在宅緩和ケアを提供するなかで,終末期の患者のケアを担うだけでなく,地域のなかで多様な活動を展開している.その活動のひとつが「おっぴさん倶楽部」である.おっぴさん倶楽部は,軽度の認知症を患った,元気な高齢者をメンバーとしていた.そのおっぴさん倶楽部は,ボランティア活動の担い手として,在宅緩和ケアのケアチームの一員として活躍していた.こうしたおっぴさん倶楽部の事例を見ると,在宅緩和ケアを行うチームの多様な活動を可能にし,支える医療のあり方が見て取れる.こうした事例が示唆するのは,患者を病人役割に押し止め,管理する医療のあり方とは異なる,医療の論理の働き方がありうる可能性である.こうした,在宅緩和ケア的な想像力を伴った医療が,今後,地域のなかで人生・生活の質(Quality of Life)に関わる多様な支援を可能にする支えとなりうると考えられる.