2024 年 53 巻 p. 17-28
日本の更生保護制度は,ボランティアである保護司がその「地域性」と「民間性」を活かして罪を犯した者やその世帯の地域生活を包括的にケアする特長を持つ.
2016年に成立した再犯防止推進法の下では,「国,地方公共団体,民間」が一丸となって,罪を犯した者の立ち直りを支えるべきことが示された.これを背景に,ここ数年,罪を犯した者の「生きづらさ」への共感を求める国の啓発活動も盛んであるが,そこには限界もある.罪を犯した者の不遇な生育歴や疾病・障害,貧困,孤立といった「生きづらさ」に共感する者は確かに存在するものの,類似した「生きづらさ」を抱えるがゆえに,それでも罪を犯さない自らと,罪を犯した者とを線引きしようとする反動も生じうるからである.
これに対して,自らが暮らす地域に「居る」ボランティアである保護司の存在は,罪を犯した者を包摂する社会の意義を「共感」とは別の形で示す側面があり,それ自体が保護司の「ケア」性でもある.こうした保護司の存在は「地域共生社会」の実現が目指される地域福祉にも示唆を与えうる.
また,多様な「生きづらさ」に対する専門的なケアやセラピーは都市部に偏在しがちであるところ,保護司は「地方」を含む全国各地に「居る」.ケアやセラピーの担い手が保護司と同様に,あるいは保護司とともに地域に「居る」ことができる社会の仕組みを構想することが,誰もが生きやすい地域を作ることにつながり得る.