2024 年 53 巻 p. 65-76
イスラームへの改宗は,ムスリム・コミュニティの拡大を経験する欧米社会で,1990年代以降,関心を集めるテーマとなっている.日本では,2000年代に入り,国内のムスリムを対象とする研究は増えているが,改宗を詳細に検討した研究はわずかである.そこで本稿は,改宗者ムスリム女性へのインタビュー・データに基づき,改宗へと至る動機とそれに影響を与える個人的背景の分析をおこなう.分析の結果,知的,神秘的,関係的,便宜的という4つの改宗動機が確認できた.加えて,改宗のあり方は,個人的危機,家族の宗教,留学経験などと関連がある点が明らかとなった.今後は,共生社会やジェンダーといった視点を取り入れつつ,事例の比較を通じて,改宗動機やプロセスのさらなる解明が求められる.