芝草研究
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研究論文
色温度および照射時間の異なる高光束密型LED光源下におけるペレニアルライグラス (Lolium perenne L.) の生育
田中 聡浅井 俊光片岡 知典及川 浩生今野 洋子水庭 千鶴子高橋 新平
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2019 年 47 巻 2 号 p. 95-104

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抄録

我が国の競技場における主要な寒地型芝草であるペレニアルライグラス (Lolium perenne L.) に対する補光の効果を明らかにすることを目的として, 室内実験を行った。2種類の色温度 (5,000Kまたは2,700K) の高光束密型Light emitting diode (LED) 照明装置を用いて, 光合成光量子束密度 (PPFD) と照射時間を変えて, 太陽光相当分と補光相当分の光を照射した。毎週, 草高を記録し, 刈高20mmで刈込み, 刈草の乾物重を測定した。28日後, 掘取り, 地上部と地下部の乾物重を測定した。総乾物重は, 処理5 (5,000K, 800μmol 8h), 処理8 (2,700K, 800μmol 4h) および処理4 (5,000K, 800μmol 4h), 処理2 (5,000K, 400μmol 4h), 処理7 (2,700K, 400μmol 4h) および処理3 (5,000K, 800μmol 2h), 処理6 (補光なし (2,700K対照区)) および処理1 (補光なし (5,000K対照区)) の順に, 大きかった。特に, 処理5の総乾物重は, 処理6および処理1の4倍となり, 地上部および地下部乾物重も同様の傾向を示した。したがって, 補光はペレニアルライグラスの乾物重を増加させたといえ, 処理5は, 耐踏性や損傷からの回復の向上の可能性がある。一方, 上方への伸長量は, 処理8において大きく, 処理4, 処理7, 処理2, 処理5および処理3がこれに次ぎ, 処理6および処理1において小さかった。すなわち, 色温度5,000Kの補光は, 色温度2,700Kの補光に比べて, 芝草の上方への伸長量を小さくした。乾物重の結果と併せると, 5,000Kの補光は, 地表付近に密度が高い葉群を展開させたといえる。また, 処理5および8は, 分げつ数や葉数が多かった。すなわち, 補光は, 発育速度の増加や利用開始までに必要な期間の短縮につながった。色温度は, 葉数の増加に必要な日数を短縮すること, すなわち, 発育に影響を及ぼすことが示唆された。これらの結果から, 高光束密型LED照明装置による補光は, ペレニアルライグラスの生育量の増大や, 発育を変化させる効果があることが明らかとなった。

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© 2019 日本芝草学会
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