抄録
海岸砂地に造成された芝草を加害するコガネムシはチビサクラコガネでその密度は非常に高く、被害も意外に大きいことが明らかになった。著者はこの虫の防除の目的をもって、成虫の地上への出現の機構、夜間行動に関する知見を得るため実験を行なった。
(1) 野外における成虫の地上出現の平均時刻は午後6時31分、飛行開始のそれは6時56分であった。地上出現時における平均照度は231.3luxで飛行開始時におけるそれは39.4luxであった。室内実験における成虫の地上出現の平均照度は芝草で54.9lux、飛行開始時のそれは5~18luxで、いずれも野外のそれより多少おくれた。
(2) 芝草に直射日光の当らない場所では、芝草を遮蔽することにより成虫は地上に出現した。遮蔽後15分で成虫の出現率はおゝむね一定に達するので、成虫の密度を調査することが可能であった。成虫の出現率と照度との関係は逆の相関がみられ、照度がある程度低下してから成虫の出現が始まった。
(3) 成虫の活動時間帯は夜間であるのでその活動音をマイクロホンでとらえ記録した。飛翔活動の最も盛んなのは午後7時から8時の間で、交尾はこの時間帯かその直後行なわれることが観察された。この時間帯を過ぎると潜土する個体が多くなるので、成虫期の防除はこの機会をとらえて行なう必要がある。
(4) 成虫を芝草と砂の中に放飼してその寿命を比較した。砂の中では飼育後6日目で100%が死亡したが、芝草の方がはるかに寿命が長く20日間も生存した個体が現われた。成虫も幼虫と同様に芝草を食害することが推察された。