抄録
最近, 各地のゴルフ場でドライスポットと呼ばれるサンドグリーン特有の病的症状が発生するようになり, 被害が問題となっている。現在までのところ, 本症状の発生状況や原因は完全には解明されていない。そこで, 本研究ではこの原因を解明する手掛かりを得るために, ベントグラスが植栽されているグリーンにおいて調査ならびに実験を試み, 以下の結果を得た。
(1) ドライスポットに関するアンケート調査により, 本症状は関東地方から近畿地方を中心として発生し, その被害が問題視されていることが明らかとなった。しかし, 本症はさらに上記の地方よりも以西, 以南の地域にも発生していると推定される。
(2) ドライスポット常発地で夏期に後期症状を呈する部分では, 症状が発生している夏期だけではなく症状が全く認められない秋期~初冬に至っても, 健全部よりも土壌水分量が低く, 土壌温度が高い状態にあることが明らかとなった。
(3) ドライスポットはスプリンクラー灌水の不均一性によって灌水量が少ない地点に発生すると想定したが, 実際にグリーン上で灌水量試験を行ったところ, 常発地点はむしろスプリンクラー付近の比較的灌水量が多い地点に偏っていた。しかしこの因果関係は今回の試験結果のみでは明らかにできなかった。
(4) 数種の市販の薬剤を用いて行ったドライスポットの回復効果試験により, 保水剤を処理すると初期症状は顕著に回復することが明らかとなった。
以上の結果から, ドライスポットの発生原因を推定するいくつかの手掛かりを得ることができたと考えられる。本症状の発生場所は毎年ほぼ決まっていることや, 症状が現れていない時でも発生部分の土壌水分量や温度が健全部と異なることから, 夏の高温乾燥期到来前に発生地点の予測は可能であり, 異常部分に前もって保水剤処理を行えば, 予防効果があると推定された。