抄録
ベントグラスとコウライシバを1990年と1991年の両年にわたり九州大学農学部内の実験圃場で栽培し, 地上部乾物生産量の季節的変化を比較, 検討した。芝草生育期間中には, 気象条件に応じて適宜灌水を行った。以下に結果を示す。
(1) ベントグラス, コウライシバについては, 1990年, 1991年とも年間約30回の刈取を行った。コウライシバの乾物生産量の季節的変化は単頂曲線型を示し, 4月は50g/m2/month前後の値であったが, 夏期 (7月, 8月) には120g/m2/month以上の値となった。両年の乾物生産量やその季節的変化はほぼ同じであった。ソッドで造成したベントグラスの乾物生産量は, 初期段階では高い値であったが, 1990年夏の高日射条件に加えて高温が長期間続いたことや病害の発生のため越夏できなかった。播種で造成した1年目 (1991年) のベントグラスの乾物生産量は, 夏期の低温, 低日射のため低かったが, 北部九州地方において越夏が可能であった。
(2) 1991年における両草種の地上部乾物生産速度を気温や日射量で重回帰分析することができた。これらの気象要因から地上部乾物生産速度を予測することが可能であった。
(3) 刈取期間の葉身窒素含量は, ベントグラスで3~4%であったのに対しコウライシバでは約2%であった。
(4) ベントグラスの夏枯れ現象は, 高温, 高日射が続き降水量が少ない条件下で発生するものと考えられた。