美術教育学研究
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高精細複製文化財による鑑賞教育と文化財保護
―二条城松鷹図を例に―
水野 裕史佐々木 あきつ
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2018 年 50 巻 1 号 p. 337-344

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抄録

本稿は,二条城松鷹図を題材に,高精細複製文化財を活用した鑑賞教育について,効果と評価を論じることを目的とする。検証にあたっては,美術鑑賞の授業を設定し,授業中に記入したワークシートの分析をおこなった。授業目標は,絵に込められた意味や絵のもつ政治性について,楽しみながら知ることである。現代の人口に膾炙する「美術」の語は,自律的で自由,時に難解なものをイメージさせるが,古美術を鑑賞する際には,このイメージが大きな障害となる。日本の文化財を楽しむためには,鑑賞の前提にある当時の絵に対する認識,つまり象徴性や政治性について正しく伝える必要がある。内容は難解だが,高精細複製文化財の再現力が助けとなり,中学生にも理解ができた。また,熊本地震直後という時機から文化財保護についても言及したが,こちらも教科書やプロジェクター投影にはない高精細複製の臨場感が,理解を助け,教育効果をあげた。

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© 2018 大学美術教育学会
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