本研究では,プロダクトデザインの題材について,人間中心設計(HCD)手法の1つである観察法の導入の可能性について検討した。まず,中学校美術科のデザイン領域におけるプロダクトデザインの題材が定着していない理由について,デザイン教育の歴史を概観することで明らかにし,プロダクトデザインの題材開発の必要性について確認した。次に,村田智明のデザインの定義を根拠に,デザイン教育によって子どもたちに付けさせたい資質・能力を,日常生活の中にある目に見えない問題を発見する「問題発見力」であると規定した。観察法による学習経験が,問題発見力を育成するのに効果的であると仮説を立て,中学生・大学生・教諭を対象とした観察法を用いた実践を分析し,本研究における仮説の妥当性について考察した。その結果,問題発見力の中でも特に「価値発見力」の向上に着目することが今後のデザイン教育において重要であると措定した。