中学校のデザイン教育では,生活や社会との関わりから生徒にデザインをする目的を持たせることが重要とされる。そこで本研究は,社会における課題の解決を目指すソーシャルデザインの考え方をふまえて題材開発と授業実践を行い,生徒によるデザインが生活の中でいきる題材について,そのあり方やデザイン教育においての有効さを示すことを目的とした。題材開発は生徒の生活に欠かせない本に着目し,これを包むブックカバーを制作する授業を実践した。授業後のアンケート調査では,美術科の学習への興味や美術に対して感じる有用さが高まったことが確認できた。またワークシートの記述からは目的や用途,ユーザーに関するコメントが増えたことがわかった。授業外には制作したブックカバーを使用する生徒の姿もみられた。本研究はソーシャルデザインをふまえた題材が中学校のデザイン教育において有効になり得る事例のひとつを示した。