本稿は,共感的に応答可能な他者とは異なる自己の理解では捉えがたい〈他者〉に焦点を当てる。日本とチェコ共和国間で「居場所」の視座から開発実践した交流授業のうち,授業「コドモ共和国」を取り上げ,児童の試行錯誤や変容のプロセスから〈他者〉と「私」の境界が形成される実際を追った。自他の境界形成の場面を分析・考察し,境界が現れる三つの活動の段階,❶分節し難い思いや行為が一体的な出来事として造形物や場に投影される,❷造形物と造形物,造形物と場との関係性を形象化する,❸造形活動や作品を省察する,が確認できた。「居場所」をめぐる造形活動では,自他を内に含む親密な境界が形成される一方,境界外部の「私」と〈他者〉が対峙するコンフリクトを生じること,また,矛盾や齟齬を積極的に言葉に表し,作品や活動を相互に吟味するチェコの授業で見られた批判的姿勢の重要性も示唆された。