本研究では,病児の造形表現活動の効果や,活動に用いる素材と手法について検討した。その際,病児特有の心理状態に注目し,カウンセリングの必要な子どもに対する非言語的な心理療法として用いられることの多いプレイセラピーとアートセラピーを手がかりとした。検討の結果,ストレスや不安を抱えた病児にとって造形表現活動は,カタルシスや昇華などが期待でき,心理的な面で治療的に働くものと考えられた。次に,造形素材について10冊の書籍を調査した結果,感情を表出する素材として「クレヨン」「絵具」「粘土」など多くが共通しており,子どもに対する心理的なアプローチに際してこれらが有用であることが示唆された。筆者の実践例においては,「みる・ふれる・えらぶ」といった能動的な関与が自己肯定感の育成と他者とのコミュニケーションも期待できる活動と考え,これを手法として提案した。