2021 年 53 巻 1 号 p. 265-272
本研究は,一版で多色刷りができる回転版画の特性に着目し,色を扱うことに苦手意識を持つ生徒や学生に対し,その楽しさを感じ色彩の可能性に気づく実践について検討する。中学校と保育者養成校という年齢や環境が異なる二つの学校で実践し,成果を比較して効果を見極めていった。対象となる生徒や学生が苦手と感じやすい要素を考慮し,インクの重ねる順序,版の加工工程,回転による色の重なりを工夫した。その結果,刷りの成功体験による意欲の向上,彫りの工程追加による好奇心の高まり,偶然の重なりによる色の観察が促されるなど,色の変化の過程に注目する状況が生まれた。多色刷りができる回転版画では,色の観察を楽しむ制作過程を通して生徒や学生の苦手意識を軽減し,色彩表現の可能性に気づくことができたと考えられる。