本稿は絵画指導時に指示される四種の「表現のルール」の存在とその影響を明らかにし,活用のための位置づけを提案したものである。一般的な絵画制作においては表現のルールは存在しない。あるいは様々である。だが,大学生を中心に1138名に対する調査で,日本各地の主に小・中学校の一部の教員による絵画指導である「表現のルール」が指導されていたことが明らかになった。また,調査では,子どもが無意識のうちに指導された「表現のルール」を絵画制作の一般的なルールとして認識してしまう可能性も示唆された。子どもは様々な表現方法を取り入れて調整しながら表現することで,自分の表現に関する認識を広げていく。「表現のルール」の指示は,子どもの表現の認識を広げるために行われるべきである。また,子どもの表現の認識は,子どもの世界の見方に影響する。「表現のルール」の指示は,その意味を明確にし,慎重に行うべきである。