2022 年 54 巻 1 号 p. 273-280
子どもの発想力,創造力を高めるための造形素材として挙げられる「絵本作り」は,小中学校の「図画工作」「美術」の授業や地域の造形活動では,長時間かけて制作するイメージがあるため,時間が限られる現場では実際に取り組みにくい状況にある。しかし,作画だけでなく物語性のある表現を伴う絵本作りは,豊かな発想力,創造力を育成する教材として適していると考えられる。本研究では令和2年度と3年度に遠隔授業として開講され,且つ異なる時間設定のもとで実践した絵本制作の例を中心に,これまで行ってきた対面授業の実践との比較から見えた今後の可能性について考察した。その結果,設定時間の違いによる完成度の差はほとんど感じられなかったが,受講生の表現方法に差異を見ることができた。また,遠隔授業では対面授業と異なる製本方法で仕上げることで,遠隔による実践が滞りなく進められることが分かった。