2022 年 54 巻 1 号 p. 49-56
本稿で取り上げるのは,平成12(2000)年度に開始し約20年間継続してきた,「美術科指導法基礎」B鑑賞領域講義の中核を成す,レオナルド・ダ・ヴィンチ「最後の晩餐」のロール・プレイで,実践検証を基盤にその学習特性を細緻に捉え整理する。執筆契機は,新型コロナ感染流行が大規模に急速度で広まる中,勤務学部理論系授業が遠隔方式に転換し,三密回避が困難なロール・プレイの実施を見送った令和2(2020)年度,web開催となった2つの学会で濱口由美,郡司明子各氏のロール・プレイに光を当てた教育実践研究を視聴できたことだった。二種実践に鼓舞され,翌年度前期に対面が復活した上記授業で,感染諸対策を徹底し種々制約も生じたが,受講者の協力を得,ソーシャル・ディスタンス版ロール・プレイを体現でき,本活動紹介も後段に組み込み,本稿では視覚的鑑賞体験を身体性が補強し精緻化し得るロール・プレイの意義を明瞭化する。