これまで,豊富な素材が配列された素材庫が,幼児にもたらす影響について研究してきた。その結果,多様な素材が幼児の発想を豊かにし,遊びを発展させ,様々な個性をもった他児との関わりを深めるのに役立ち,インクルーシブ保育の実現に貢献することを確認した。今回は,素材庫を活用した大学生と活用しない短大生の「保育の表現技術」の授業に対する取り組み方をアンケート調査によって比較した。その結果から,素材庫が学生に与える影響を分析し,保育者養成における素材庫の意義について考察した。素材庫を活用することで,学生の選択肢が増し,多様な広範な可能性の受け容れも考慮できるようになった。また,自分に合った選択ができることで授業に対する積極性も高まった。多様性への気づきと多様な可能性の受容は,インクルーシブ保育を行うための重要な資質である。素材庫の活用は,学生の資質向上に貢献すると期待される。