2020 年 12 巻 p. 117-124
野鳥は生活圏で日常的に観察できる優れた生物教材と考えられるが,教育にまつわる実践報告は限られている。野鳥の動きは迅速で,その存在に気がつく事は容易でも,名称の同定には困難が伴う。この同定の困難さを解決できれば,野鳥の理解を高め,生物教材としての価値を生かすことができる。野外で森林性の小鳥類の観察を継続できる時間は平均32.3 秒であった。この時間内に野鳥を同定する手法として,出現可能性の高い野鳥を予め予測,抜粋し,カードとしてまとめた「カード式図鑑」を考案した。10 種類にまとめた「カード式図鑑」を用いると,観察可能時間よりはるかに短い,平均8.3 秒で同定できた。通常の図鑑を用いると同定に3 分ほど掛かることを考えると,「カード式図鑑」は観察と並行して同定を可能にする,有用な手段であると思われる。フィールドワーク時の同定を容易にする「カード式図鑑」により,野鳥を介した生物教育の進展を期待する。