2015 年 10 巻 p. 61-77
行為主体間の相互作用として捉えられる社会関係は,空間に投影されて立ち現れる.したがって,都市を研究対象とする際,そこに投影された社会関係に着目する必要がある.本稿では,こうした空間理解の仕方に立ち,敗戦後の長崎県佐世保市を取り上げ,とくに売春地区を含む歓楽街に着目した.国家や地方行政といった権力主体と,それらに他者化されるさまざまな行為者との間の関係性が,遊興空間の形成・再編にいかに投影されたのかを明らかにすることが,本稿の目的である.研究方法として,終戦直後の地元新聞や行政記録を手がかりに,佐世保市内における歓楽街の形成過程を跡付けた.