2008 年 3 巻 p. 18-32
本研究は,東京都心における企業のオフィス構築活動を,会計事務所を起源とする外資系経営コンサルティング企業を対象として検討した. 対象企業では,1990 年代前半に始められた情報化投資と組織改編,「社員のプロフェッショナル化」を目的とした人事制度の刷新によって,オフィス内部における情報取得機会の均質性が向上し,1990 年代半ばにフリーアドレスオフィスが採用された.そしてその上に,顧客先でのコンサルタントの活動を支援するためのモバイルワークが導入された.企業再構築の結果として発生したこの一連の過程に基づいて,既往のオフィス立地研究における概念要素を用いた,都市的土地利用形態としてのオフィスを概念化することができる. フットルースなワーカーの活動を前提とし,オフィスから都市空間に拡張されたこの「働く場」はコンサルティングのメニューとして商品化された.しかし対象企業は,あえて既存顧客との関係強化を目的として大規模再開発の進むCBD への移転を行った.この「都心性」を重視した立地において,オフィスは不可視的な経営コンサルティングを可視化して提示するショールームとして位置付けられている.