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植生学会誌
Vol. 32 (2015) No. 1 p. 37-48

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http://doi.org/10.15031/vegsci.32.37

原著論文

1. モンゴルの森林ステップ域と典型ステップ域における耕作放棄後の植生回復について評価するために,それぞれの植生帯で2 年間休耕されている耕作地,20 年間以上放棄されている耕作放棄地,自然度の高い放牧地の種組成を近傍する地点で比較した.また両植生帯の植生変化プロセスを比較することにより耕作放棄後の植生回復を妨げる要因について考察した.
2. 森林ステップ域に位置するセレンゲ県北部において,休耕地で7 スタンド,耕作放棄地で6 スタンド,放牧地で5 スタンド,典型ステップ域に位置するトゥブ県中部において,休耕地で17 スタンド,耕作放棄地で5 スタンド,放牧地で8 スタンドを設定し植生調査を行った.
3. 耕作停止後の種組成変化,その変化プロセスにおける地域的な差異を検証するために,NMDS による序列化およびPermutational MANOVA を行った.耕作放棄後の種組成変化が同地域の自然度の高い放牧地に近づく変化であるかを評価するために,各地域の放牧地のスタンド群についてどの既存群集との類似性が高いのかを明らかにし,類似性が高いと判断された既存群集の標徴種群が放棄地と放牧地の種組成の類似に寄与しているのかについて判断した.
4. セレンゲ県のステップ植生はPoo attenuatae-Stipetum grandis に類似し,トゥブ県のステップ植生はCymbario dahuricae-Stipetum krylovii に類似していた.NMDS による序列化とPermutational MANOVA の結果より,トゥブ県に比べセレンゲ県の方が休耕地と放棄地間の種組成の相違が大きく,かつ放牧地に種組成が類似していることが示された.また,セレンゲ県の放棄地では群集標徴種,群団標徴種,クラス標徴種が出 現していたが,トゥブ県の放棄地では群団標徴種とクラス標徴種は出現していたものの群集標徴種は出現していなかった.
5. セレンゲ県の放棄地の種組成は20 年かからず放棄直後から大きく変化し,調査地点周辺のステップ植生を特徴づける標徴種群も再定着するが,トゥブ県の放棄地の種組成は約20 年程度では放棄直後からあまり変化せず,耕作により失われた標徴種群の再定着も困難であった.セレンゲ県では耕作放棄後に植生回復しないリスクが低く,トゥブ県では耕作放棄後に植生回復しないリスクが高いと評価された.
6. セレンゲ県の放棄地では,降水量が多いため耕作放棄地に散布された種子の発芽・定着の機会が多く,一方で,トゥブ県の放棄地では,降水量が少ないため放棄地に散布された種子の発芽・定着の機会が少なく,植生回復プロセスに違いが生じた可能性がある.

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