2024 年 82 巻 1-4 号 p. 101-108
岡山県新見市久原西方に見られる備北層群是松層(前期中新世後期:17.0–16.5 Ma)から得られたヤマタニシ科 ヤマタニシ属 Cyclophorus Montfort, 1810 陸産貝類の一化石種を新種記載した。本新種は,弱い縫合と体層に見られる弱く角ばった周縁の存在から,現世日本産の本属他種や,これまで本属で唯一知られていたベトナムの前期中新世の化石種とは形態学的に異なる。
Cyclophorus kubarensis n. sp.(クバラヤマタニシ: 和名新称)
殻径14.7+ mm,殻高12.8+ mmと小さく(ホロタイプ),約4.5+ 巻,螺旋形かつ円錐状の球形をしている。堅牢な殻を持ち,臍孔は狭い。体層は大きく,周縁が弱く角ばっている。原殻表面は滑らかだが,それ以降の体層表面には成長線が見られる。殻口の大部分が欠けている。
タイプ産地:岡山県新見市西方久原小野田セメント採掘地跡の下部中新統上部備北層群是松層。
備考:クバラヤマタニシ Cyclophorus kubarensis n. sp.は,殻サイズは既知の日本産他種と似ている(Hirano et al., 2022)。これらの現生種のうち,ヤマタニシ Cyclophorus herklotsi Martens, 1860 は,本タイプ産地周辺に分布する(Hirano et al., 2022)。一方で,本新種の殻形態は琉球列島産の現生種オキナワヤマタニシ Cyclophorus turgidus (Pfeiffer, 1851)により類似する。これらの現生種と比較すると,本新種の体層周縁角は弱いが,オキナワヤマタニシでは明確に角張り,ヤマタニシを含む他の日本産他種では丸い。ベトナムの下部中新統で発見された Cyclophorus hangmonensis Raheem & Schneider in Raheem et al., 2017と比較して,本新種は縫合が弱い。