2017 年 1 巻 2 号 p. 103-107
介護福祉分野において外国人介護職が増加している。その中にはイスラーム教徒も多数存在しており、彼らとの協働の機会も増えているが、宗教への理解や生活習慣への理解の困難さも報告されている。
本稿では、多文化共生の視座を得る目的で、イスラームの世界観をキーワードに検討した。結果、イスラームはお互いの世界観の存在を前提に自らのイスラーム世界の律法の対象としない等、他世界への侵入を行なわないことで共生を実現してきたイスラーム観が存在していた。
また、多文化共生の障壁として、対等な関係性を前提としていない社会的構造が存在し、これが並行社会へと向かうことにもつながる。
以上のことから、多文化共生実現のためには、宗教の教義や文化、習慣といった理解に終始するのではなく、文化相対主義の視点と対等な関係性を前提とした社会的構造の構築の必要性が示唆された。