本稿は、ドナルド・ショーンの「省察的実践家」論の、日本の保育学における解釈の諸相を明らかにする。「省察的実践家」論は、今や保育者の専門性を語る際の代表的な参照項となっている。一方には、「省察的実践家」が保育者の専門性のモデルだとする論者がおり、もう一方には、「省察的実践家」は参考にはなりうるが、保育者の専門性そのものではないとする論者がいる。ショーンのいう「省察」をめぐっては「行為における省察」と「行為についての省察」があり、前者を実践の最中、後者を実践の後に行うものと時制上区分する見方が支配的である。こうした見方を提示したのは秋田喜代美だが、現在、秋田は「省察」を時制上区分することをしていない。「省察」を時制上区分しない見方としては、行為の文脈に即して行為の意味連関の中で思考するのか、行為の枠組みや学習システムという一つ上の次元で思考する(メタ認知)のか、で区別する見方が提示されている。