敬心・研究ジャーナル
Online ISSN : 2434-1223
Print ISSN : 2432-6240
5 巻, 2 号
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • ―自尊感情と心的外傷後成長の視点から―
    近藤 卓
    2021 年 5 巻 2 号 p. 1-9
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    本稿の目的は、コミュニケーションと心の健康の関わりを考察することで、良好なコミュニケーションが心の健康を維持し増進する仕組みを明確化することである。コミュニケーションについては、二人の個人間のコミュニケーションに限定して議論した。その際、二人の関係を捉える枠組みとして、向き合う関係と並ぶ関係に整理できることを示した。また、心の健康としては自尊感情と心的外傷後成長を鍵概念として議論した。日常生活における心の健康は、自尊感情の安定によってもたらされると考えられる。そして、事件や事故などに遭遇した時に生じる心的外傷と、それに続く心的外傷後ストレス障害から心的外傷後成長への道筋を考えるときに重要な役割を果たすものとして、安定した自尊感情の果たす役割について指摘した。結論的に言えることは、良好なコミュニケーションを維持増進することが、平穏な日常生活においてのみでなく、困難な状況の中でのもがき苦しみの渦中にあっても極めて重要なものとなるということである。

  • ―ドナルド・ショーン理解の混乱―
    安部 高太朗, 吉田 直哉
    2021 年 5 巻 2 号 p. 11-19
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    本稿は、ドナルド・ショーンの「省察的実践家」論の、日本の保育学における解釈の諸相を明らかにする。「省察的実践家」論は、今や保育者の専門性を語る際の代表的な参照項となっている。一方には、「省察的実践家」が保育者の専門性のモデルだとする論者がおり、もう一方には、「省察的実践家」は参考にはなりうるが、保育者の専門性そのものではないとする論者がいる。ショーンのいう「省察」をめぐっては「行為における省察」と「行為についての省察」があり、前者を実践の最中、後者を実践の後に行うものと時制上区分する見方が支配的である。こうした見方を提示したのは秋田喜代美だが、現在、秋田は「省察」を時制上区分することをしていない。「省察」を時制上区分しない見方としては、行為の文脈に即して行為の意味連関の中で思考するのか、行為の枠組みや学習システムという一つ上の次元で思考する(メタ認知)のか、で区別する見方が提示されている。

  • ―特殊訓練を受けたイギリス人熟練労働者の事例を中心に―
    橋口 三千代
    2021 年 5 巻 2 号 p. 21-32
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    本研究では、英国北部リーズ市のスォスモア・エデュケーション・センター(Swarthmore Education Centre)を事例として、職場の生産性を支える技能形成方式を検証した。用いる手法は、エスノグラフィー、アンケート、聞き取り、1次、2次資料分析であり、2003年から2013年の間に収集したこれらのデータを分析した。小池・猪木(1987)の理論で検証した結果、政府拠出金により運営された「代替プログラム」は、組織が訓練費を投資し、従業員が特殊技能で対応したことによって、政府資金が多く投入されている教育分野であっても、英国の事例では民間とは異なる背景の中で、その生産性に正の影響を与えることが示された。また特殊訓練費を投資された労働者への出産休業対応などは、技能形成方式の文脈から経済効率性によって説明可能であり、Becker(1964)ではプレミアムの一部としてしか把握されなかった出産休業時における業務代替への動機を、仲間は訓練機会を得ると説明できることを示した。

  • ―ロコモティブシンドローム・サルコペニアに対する影響―
    奥 壽郎
    2021 年 5 巻 2 号 p. 43-46
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    2018年度に開催した大阪人間科学大学公開講座「健康寿命を延ばそう〜メタボ・ロコモをやっつけよう〜」(2018年10月開催)を契機に、地元自治会から「健康寿命延伸に向けた連携事業」の要請を受けた。その結果、大阪人間科学大学保健医療学部理学療法学科奥研究室が担当し『筋力トレーニング鋼材』を1年間実施することとなった。講座は筋力トレーニング指導と健康寿命に関するミニ講義を中心としたものである。1年間の効果判定として、ロコモティブシンドローム判定とサルコペニア判定とした。2019年5月の初期測定会と11月中間測定会のデータを比較検討し、運動指導効果を検討した。その結果、ロコモティブシンドロームの改善効果とサルコペニア発症予防効果が確認できた。

  • ―特に80歳代と70歳代の比較―
    金辻 良果, 高橋 洋
    2021 年 5 巻 2 号 p. 47-53
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    在宅、地域における高齢者を対象にして、身体能力と、認知、心理機能との関連性を調べ、80歳以上群と80歳以下群との差異を比較検討した。市民農園で野菜作りをしている人、地域シルバー人材センターに所属し駅で自転車管理の仕事をしている人、近隣のマンション住まいの人など、計30名(平均年齢76.5±6.04歳)をアンケート調査の対象とした。アンケート内容は身体能力として、老研式活動能力指標(老研)、モーターフィットネススケール(Motor Fitness Scale MFS)、認知機能としてミニメンタルステート検査(MMSE)、心理的状態として視覚アナログスケール(VAS)を用いて、主観的健康度、生活満足度、生きがい感、人間関係の満足度について主観的評価をした。その結果MMSE は他の機能との相関はなく、身体能力と精神状態との関連はほとんど認められなかった。主観的健康感は生きがい感からの影響が強く、人間関係の満足度は生活満足度、主観的健康感、老研式活動指標からの影響があった。生きがい感は主観的健康感、と生活満足度からの影響があった。80歳以上群と80歳未満群の比較では、80歳以上群は80歳未満群より心理状態の自己評価が高かった。

  • ―集団保育・人権保育論―
    吉田 直哉
    2021 年 5 巻 2 号 p. 55-63
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    本稿は、幼児教育学者・玉置哲淳教授の幼児教育学・保育学分野における研究業績のうち、1980年代以降の乳幼児の集団づくり論、人権保育論に関する主要業績7件についての解題を加えるものである。玉置教授の集団保育論・人権保育論は、独特の「きめつけ」概念の展開、アメリカにおける幼児教育カリキュラム理論の摂取に基づいた「人権力」概念の提起という形で、2000年代初頭にかけて発展していった。

  • 吉田 直哉
    2021 年 5 巻 2 号 p. 65-72
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    本稿は、体育教育学・体育心理学を専攻した近藤充夫の幼児運動論を検討し、その児童中心主義的性格を抽出することを目指すものである。近藤は、幼児期の健康は、身体と精神の共進・交絡によって創り上げられるとし、単に身体運動だけに焦点化する体育教育を批判する。可視的・外面的な身体運動だけに焦点化する指導は、技術指導に軸を置く小学校以降における教科体育の指導に近似してゆき、幼児期の発達特性を無視したものになりかねない。近藤にとっては、幼児期における運動は自己表現なのであり、遊びの中で多様な動きを経験することによって、結果として身体・精神の発達を実現していくような営みなのである。

  • 伊藤 絵梨華, 高橋 洋, 細谷 陽太
    2021 年 5 巻 2 号 p. 73-82
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    対象はデイケア利用者で介護度が要介護1・2の15名である。質問用紙の記入、体成分分析装置による検査を行い、行動変容ステージの評価を行う。プラステン活動を提案し4週間実施していただき、4週間後、初回と同様の評価・検査を行った。行動変容ステージは準備期から実行期へ移行した割合が最も多かった。プラステン活動提案後の行動変容ステージについて、行動変容ステージが良いのは夫婦のみの世帯、30分以上運動が継続でき、主観的健康感が良く、今後の生活への不安感がないと回答した75歳から84歳までの人、女性であった。ステージが悪いのは85歳以上、独居世帯の男性で運動継続が毎日は無理、主観的健康感では健康ではないと回答した人だった。初回とプラステン活動提案後の体成分は骨格筋量と基礎代謝量に有意な変化がみられた。要介護の高齢者に対しても、プラステン活動を提唱することで行動変容を起こさせることができる可能性がある。

  • 高橋 明美
    2021 年 5 巻 2 号 p. 93-103
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    2008年から始まった経済連携協定(EPA)は、介護福祉士候補者(EPA候補者)が来日し、就労しながら介護福祉士資格の取得を目指すものであるが、国家試験の合格率は全平均で46.5%と低い。長期的就労を望むEPA候補者と施設も少なくないが、そのためには、介護福祉士の取得が必要である。文献研究とインタビュー調査を通じて、施設での研修について現状と課題を考察した結果、公益社団法人国際厚生事業団(JICWELS)の学習支援を柱としつつも、各施設が独自に研修を行っていること、施設、法人、先輩外国人介護職員、外部機関が役割分担をしながら、学習支援にあたる体制を構築しつつあることが明らかとなった。また、外国人介護職員が、職員としての役割を着実に果たしており、施設運営の面から資格取得および施設内研修の重要性がさらに高くなると考えられる。今後の課題として、他施設や他法人および外部機関と連携した研修体制の構築の推進、教材やカリキュラムの開発、EPA候補生の学習状況を共有する仕組みづくりがあげられる。

  • 山田 克宏
    2021 年 5 巻 2 号 p. 105-114
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    本研究では、F-SOAIP(生活支援記録法)を用いた学生の実習前教育、実習での段階的な学習による学生の実習記録に関する認識変化を明らかにすることを目的とした。

    調査対象は、A大学で介護実習Ⅱ、ソーシャルワーク実習を終えた学生12名である。実習前と実習後の記録に関する学生の認識変化をまとめた。結果、介護実習Ⅱの学生は、アセスメントの難しさ感じていたものが、F-SOAIPの機能の理解が出来たという認識変化みられた。また、ソーシャルワーク実習の学生は、F-SOAIPの難しさを感じていたものが、実践過程の可視化していく効果を実感出来ている。

    結論は、学生は、F-SOAIPが多職種間の連携の促進の効果的なツールであるという認識に至ったように段階的学習が出来たことが推察できる。

    今回のアンケート調査は、ケース数が少なく一般化することには限界がある。今後は、記録の形式を叙述式、SOAP、F-SOAIPと学習習熟度に応じて使い分けるプロセスを模索していくことが、研究課題と言える。

  • 鈴木 健一
    2021 年 5 巻 2 号 p. 115-127
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    人々の心のケアを担う心理臨床家は、人々と同様に様々なストレスにさらされている。特に「二次的外傷性ストレス」は大きなリスクであり、十分注意を払わねばならない。しかし、そのリスクについてはあまり周知されていないばかりか、心理臨床家としてのあるべき姿によって、自らの心身を保つセルフケアが重視されていないことが懸念される。本稿はこのような心理臨床家の負担となっている疲労やストレス、それらに対して有用な方法に関する文献を概観する。そして、臨床上のストレス、臨床家としての研鑽活動、それらが私生活に与える影響によって負担となることについて考察する。心理臨床家の間で経験的におこなわれてきた「仲間に話す」ということが孤立を防ぐという観点でも有効なセルフケアとして機能していると考えられる。

  • 2021 年 5 巻 2 号 p. 155
    発行日: 2021年
    公開日: 2022/01/13
    ジャーナル フリー

    記載内容に誤りがあり、下記の通り訂正します。

    敬心・研究ジャーナル 第5巻第1号 P1 - P11

    総 説

    職業教育とキャリア教育及び高等教育との関連

    ― 政策形成への関与を振り返って ―

    寺田 盛紀

    P3 右段 24行目から(25行めに文言挿入)

feedback
Top