敬心・研究ジャーナル
Online ISSN : 2434-1223
Print ISSN : 2432-6240
村上春樹の中の絵本
―村上春樹と児童文学Ⅱ―
原 善菅野 陽太郎崔 順愛恒川 茂樹原田 桂
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2022 年 6 巻 2 号 p. 63-73

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抄録

村上春樹の中に児童文学との繋がりを確かめる作業の一環として、今回は村上春樹における絵本の持つ意味を探る。彼は膨大な創作作品以外のジャンルでも幅広く発表し続けてきている一方で、専門の翻訳家を凌ぐ量の数多い翻訳書の刊行も続けてきているが、その両方において彼は《絵本》というジャンルにも関わっている。その全ての仕事を一覧表の形で纏め、その全貌が見渡せるようにすると共に、自解の言葉を渉猟・整理することで、村上春樹が《絵本》に関わる経緯を辿れば、そこに彼の絵本翻訳家としての自覚と自負が確認できる。その一方で、彼の創作絵本が、子供向けに見える『ふわふわ』を含め、大人向けに書かれていたこととパラレルな関係で、彼の翻訳絵本も、単純な子供向けのものではないこともわかるのだが、だから村上春樹の作品は児童文学の範囲を超えている、というより、むしろ村上春樹文学の本質に児童文学に通ずるファンタジー性を見るべきなのだ。

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