敬心・研究ジャーナル
Online ISSN : 2434-1223
Print ISSN : 2432-6240
6 巻, 2 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • ―教育福祉の観点からみた専門学校職業教育の意義―
    瀧本 知加
    2022 年 6 巻 2 号 p. 1-12
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    本論は、専門学校における職業教育を青年期教育の視点から捉えなおし、教育学研究としての専門学校研究の新たな視点を提示するものである。戦後、日本型雇用の成立に伴って、偏差値主義的学力に基づく競争的な青年期が出現した。青年期教育研究においては、日本型雇用に当てはまらない生き方をする青年をノンエリート青年とし、分断的に把握してきた。本論では、教育福祉の概念を用い、全ての青年にとって、青年期教育の競争的性格の克服と職業教育の機会の保障が必要であると整理した。本論では、これら青年期教育の課題に対し青年期の大衆的な職業教育機関として専門学校が独自の意味を持っている点を確認し、専門学校教育の発展の要因を5つの点、すなわち「職種別労働市場に対応した職業教育」「戦後の専門学校制度の特殊性」「学校形態の教育機関であること」「日本の教育制度の二重構造型」「教員の教育の自由」から説明した。

  • 檜垣 昌也
    2022 年 6 巻 2 号 p. 13-21
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    本稿では、昨今の8050問題に付随する中高年<ひきこもり>の出現過程を手掛かりに論を進める。次に、若年無業者の実態、若年無業者対策の展開を概観し、その課題を抽出した。そして就労支援の視点からは若年無業者に含まれる<ひきこもり>についてその支援の課題、ならびに当事者、支援者双方による恣意的な運用にも言及し、その支援と課題についても明らかにした。これらの知見から、支援のミスマッチといえる現状から支援観の転換を模索し、その必要性と概念、家政学的な概念という具体的な方法を提示した。

    本稿における課題は、この論旨について理論的構築にとどまっており、実証的な知見の提示にまでは及んでいない点である。

  • ―実習園への聞き取り調査から―
    小澤 由理
    2022 年 6 巻 2 号 p. 23-31
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    本稿は学生の学びを支えるための実践的で効果的な実習日誌の指導について、実習日誌の様式に注目し、実習指導を行う保育所および幼稚園の現場職員にインタビュー調査を行った。本調査の内容は①各園が重視する実習日誌の指導のポイント②現行の実習日誌の主流である時系列型およびエピソード型のメリット・デメリット③今後の望ましい日誌の様式を一覧としてまとめた。①については保育者の意図や動きの把握、考察を十分に行えたかという点を重視することが分かった。また②日誌の様式については、時系列型の日誌は一日の流れを把握することについては評価は高かったが、実習段階に応じた指導や保育の観察や考察の質を高めるにはエピソード型の日誌の評価が高かった。③デジタル機器を活用した新しいタイプの日誌については、個人情報保護の観点から慎重な意見が多かった。一方で、効率的な日誌の指導についてはデジタル機器の積極的な活用を求める声があった。

  • ―日本児童教育専門学校での「保育実習指導Ⅰb」における実習日誌指導の実践報告―
    水引 貴子
    2022 年 6 巻 2 号 p. 41-45
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    保育士養成校の保育実習Ⅰ(施設)においても日誌の記述は重要事項でありながら、学生が負担に感じている事柄でもある。それにもかかわらず、施設実習指導では日誌の記述法を具体的に指導する時間や方法が十分でない状況も事実である。そのような状況を少しでも改善できるよう、日本児童教育専門学校の2021年度「保育実習指導Ⅰb」で筆者も含めた3名の教員によって行われたノートの作成を活用した指導法を振り返り、新たにノートの採点ルーブリックを提案した。このルーブリックは、日誌記述で求められる「誤字脱字をしない」といった基礎的な文章力や、エピソードの記述とそれに対する考察などにおいて、両者に共通している点が複数認められる。よって、「保育実習指導Ⅰb」でのノート作成の指導法の取り組みが、日誌を書く上で必要な観点と共通点があることから、理にかなっていると言える。

  • 馬 春陽, 吉田 直哉
    2022 年 6 巻 2 号 p. 47-54
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    本稿は、高齢化が急速に進行する2000年以降の日本において、介護ニーズの拡大に対応する人的資源の確保の必要性が社会的・政治的問題として認識されるに至った経緯を踏まえ、介護職に従事する人材確保のための政策として、日本政府が推進してきた外国人労働者の受け入れ政策が提起されるに至るまでの経緯を概観しようとするものである。介護職にとどまらず、近年、日本国内においては労働力不足が深刻化し、日本政府は在留資格を新設するなどし、外国人労働力の受け入れを奨励するなど、労働人口の維持に努めてきた。本稿は、日本における高齢化の状況を統計から概観した上で、介護従事者不足の現状を検討し、それへの政府等の対応策の諸相を見る。

  • ―村上春樹と児童文学Ⅱ―
    原 善, 菅野 陽太郎, 崔 順愛, 恒川 茂樹, 原田 桂
    2022 年 6 巻 2 号 p. 63-73
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    村上春樹の中に児童文学との繋がりを確かめる作業の一環として、今回は村上春樹における絵本の持つ意味を探る。彼は膨大な創作作品以外のジャンルでも幅広く発表し続けてきている一方で、専門の翻訳家を凌ぐ量の数多い翻訳書の刊行も続けてきているが、その両方において彼は《絵本》というジャンルにも関わっている。その全ての仕事を一覧表の形で纏め、その全貌が見渡せるようにすると共に、自解の言葉を渉猟・整理することで、村上春樹が《絵本》に関わる経緯を辿れば、そこに彼の絵本翻訳家としての自覚と自負が確認できる。その一方で、彼の創作絵本が、子供向けに見える『ふわふわ』を含め、大人向けに書かれていたこととパラレルな関係で、彼の翻訳絵本も、単純な子供向けのものではないこともわかるのだが、だから村上春樹の作品は児童文学の範囲を超えている、というより、むしろ村上春樹文学の本質に児童文学に通ずるファンタジー性を見るべきなのだ。

  • ―鯨岡峻と大宮勇雄の場合―
    安部 高太朗, 吉田 直哉
    2022 年 6 巻 2 号 p. 75-84
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    本稿は、鯨岡峻のエピソード記述と大宮勇雄の学びの物語に着目し、保育記録が記録対象として何を残すのかを決める前提には、その記録論に固有の発達観があることを示す。エピソード記述の背景には、従来の保育記録が子どもの発達の能力面にのみ焦点化しており、子どもの発達における心の面が取り上げられてこなかった、という批判がある。それゆえ、エピソード記述では、子どもが変容する様子が、保育者に心の揺れ動きとして間主観的に感じ取られた場面が記録される。発達の本質を心の育ちに見るのである。学びの物語は、一人の子どもの行動を継続的に記録する。発達の本質は文化的な実践への参加だとする、ロゴフらの社会文化的アプローチに基づく発達観に立ち、子どもの行動の変化を保育者が学び・発達として意味づけていく。二つの記録論の前提となる発達観が著しく相違するように、記録方法の選択は、記録対象・目的等の前提を考慮してなされるべきである。

  • ―「共感」と「誘導」の葛藤をめぐる試論としての再考―
    安部 高太朗, 吉田 直哉
    2022 年 6 巻 2 号 p. 85-93
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    本稿は、大豆生田啓友に着目し、彼が倉橋に仮託して語ろうとした現代日本の保育の理念を抽出するものである。大豆生田は、現代日本の保育実践が、子どもの主体性(自発性)と保育者の指導性の葛藤と向き合っているとし、これは、倉橋が直面していた葛藤と同質だとする。大豆生田が、倉橋に言及する際に反復的に取り上げる概念は、①誘導、②心もちへの共感である。大豆生田は、①を、保育者が主題を示すことで、子どもの原初的・断片的な生活興味に基づく「さながらの生活」に方向性を与える行為とだとし、②を子どもの瞬間的・流動的な心情的側面である「心もち」を捉え、それに肯定的な言語をもって応答するという受容的な行為だとしている。保育者の行為としての①及び②は、対象や意図性の有無などにおいて相違している。しかし、大豆生田はこれらの関連性ないし葛藤が生じる可能性について論じていない。

  • 川廷 宗之
    2022 年 6 巻 2 号 p. 95-106
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    この研究ノートは、主に高等教育における「職業教育」と「教養教育」の違いを、「職業教育」の独自性を明確にするという研究目的のもとに、その着眼点や研究の概要に関して整理したものである。

    特に、「教育」として、無意識に「教養教育」の目的や内容や方法を高等教育の基本とする考え方に対し、それは「職業教育」の進め方と異なるという立場で、その差を強調する形での問題提起を試みた。

    何故なら、高等教育の多くの関係者が「職業教育」の特性を把握しないまま、教育実践を行うため、実践的な職業教育ができないと考えるからである。その結果、「教養教育」を含め「(高等)教育」への期待や信頼が損なわれ、又、多くの学生が職業人としての学びの機会を失っている。

    この領域の研究は、多くない。しかし、日本の教育に関する極めて重要な課題であり、引き続く研究の入り口として、とりあえず教育目的や達成課題の段階までの問題意識をまとめた。

  • 小林 英一, 渡邉 みどり, 内田 和宏
    2022 年 6 巻 2 号 p. 107-115
    発行日: 2022年
    公開日: 2023/01/25
    ジャーナル フリー

    本稿では、令和3年度文部科学省委託事業「DX等成長分野を中心とした就職・転職支援のためのリカレント教育推進事業」における「DX福祉職養成プログラム」の開発に向けた取り組みについて報告を行う。本プログラムは、飲食業やサービス業等の失業者や退職者の方を対象に、これまでの対人サービスのスキルや経験を活かして福祉職に就職・転職できるよう、福祉の専門的知識や技術に加え、ICTやロボットが活用できる「即戦力」のDX福祉職を養成することを目的として開発を行っている。本稿では、プログラム開発にあたり社会背景を概観し、介護事業所のマネジメント職ならびに介護養成校の講師・教員を対象として実施したアンケート調査について報告を行う。

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