抄録
1. 我が国における食物アレルギーの現状:病院の小児科アレルギー外来を訪れる子供達の姿が近年とみに目に付くようになってきている. 多くの子供達が苦しんでいるアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患の原因として, 日常摂取する食品成分としてのタンパク質が関与する, いわゆる食物アレルギーが注目されている. 一方, 最近では季節の変わり目に増加する花粉症を初めとして, 成人の間で食物アレルギー以外に口腔アレルギー症候群(oral allergy syndrome:OAS)やラテックス-果物症候群(latex-fruits syndrome)などと呼ばれる新しいタイプのアレルギー疾患と診断される患者の増加も指摘されている. 生活環境におけるアレルギー誘発因子(アレルゲン)の探索, 究明が精力的に行われ, 興味深い事実が次々と明らかにされつつある. 特に, 植物由来の特異なタンパク質が, ヒトの免疫系を刺激してIgE抗体の産生を誘導して, I型(即時型)アレルギーを惹起することが明らかにされてきた.