ビタミン
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ビール酵母の特性とその新しい効用について
伊藤 みどり
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2005 年 79 巻 1 号 p. 30-32

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抄録

ビール酵母(Saccharomyces cerevisiea)は, 直径5〜10μmの球形ないしは卵形の細胞であり, 周囲を硬い細胞壁で覆われている. ビール製造において, 原料(麦汁)からアルコールを作り出しているのがビール酵母である. それ以外の目的でもビール酵母利用の歴史は古く, 紀元前4世紀頃ギリシャの医師ヒポクラテスが焙焦酵母を婦人病に用いたといわれている. 1910年から1930年代にかけて世界各国でビタミンが次々と発見されたが, 酵母はこれらの発見に研究材料として大きく貢献した. 酵母はB1を生合成することができる単細胞の真核生物であるが, 培地中のB1の吸収も行い, 細胞内に多量のB1を蓄積する能力を持つ. 我が国においても酵母のこのような性質を利用して, ビタミンB1が初めて単離された. 大日本麦酒株式会社の橋谷らはビール酵母がビタミン類を豊富に含むことに着目し, これを薬用に用いるべく研究を重ねた末, 乾燥粉末を製造することに成功し, 乾燥ビール酵母が1930年「エビオス」として発売された.

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© 2005 日本ビタミン学会

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