2005 年 79 巻 2 号 p. 116-117
アスコルビン酸(L-ascorbic acid;AsA)は植物組織に高濃度で存在しており, 多くの生理機能を有している. AsAは, そのものの持つ抗酸化機能とともに, 種々の酵素反応のコファクターとして機能することが知られている. また, 可逆的な酸化還元系を介した電子供与体, あるいは受容体として, 植物のレドックス制御にも関与していると考えられている. さらに, AsAが, 細胞壁の形成や, 細胞分裂, 伸長に関わっていることも示唆されている. 最近, マイクロアレイによる遺伝子の網羅的解析を契機として, AsAが病害抵抗性に関わっていることを示す研究が報告されたので紹介する. 現在, 植物における主要なAsA生合成経路はSmirnoff-Wheeler経路(D-mannose, L-galactose, L-galactono-1, 4-lactone)であると考えられている. シロイヌナズナのミュータントvtc1は, この経路におけるD-monnose-1-PからGDP-D-mannoseの生成を触媒するGDP-D-mannose pyrophosphorylase(GMPase)の遺伝子に変異が起きており, AsA含量が野生株に比べて30%まで低下している変異体である.