2005 年 79 巻 2 号 p. 118-119
大部分の男性不妊症は成熟した精子の欠失(Azoospermia)あるいは精子数の減少(Oligozoospermia)を伴う精子形成不全を呈する. 精巣は主に, 精子へと分化する生殖細胞(germ cell)と精子形成を支持するセルトリ細胞, またアンドロゲンを分泌するライディッヒ細胞から構成されており, いずれの細胞種の発生, 分化障害, また作用不全によっても精子形成の障害が起こると考えられる. 精子形成過程においては, 生殖幹細胞すなわち精原細胞が精母細胞に分化, 減数分裂を経て半数体の精子へと分化する. 減数分裂においては, ザイゴテン期に相同染色体が並行となり, シナプトネマ構造形成が始まり, パキテン期に終了する. さらに, ディプロテン期, ディアキネシス期を経て2回の分裂が起きる. リガンド誘導性転写制御因子である核内受容体の個体発生において果たす役割は大きく, 精子形成においても重要であることが明らかになってきている. 例えば, 女性ホルモン(エストロゲン)受容体(ER)であるERαのノックアウトマウスでは, 精母細胞期の生殖細胞が分裂障害(パキテン期)を起こし, 精子形成不全が発生する.