ビタミン
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ビタミンCの疾患に関わる生理機能の解析 -抗炎症作用を中心にして-(特集 第1回ビタミンC研究委員会シンポジウム「今,ビタミンCが面白い」)
堀尾 文彦川出 野絵
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ジャーナル オープンアクセス

2020 年 94 巻 8 号 p. 443-446

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抄録
我々は遺伝的にアスコルビン酸を生合成できないODSラットをモデル動物として用いて、ビタミンCであるアスコルビン酸(AsA)の新たな生理機能を探求してきた。ODSラットにAsA無添加食を与えてAsA欠乏を引き起こすと、肝臓でのC反応性タンパク質などの急性期タンパク質(APPs)の発現が上昇し、それらの血中濃度も上昇することが明らかとなった。APPsは炎症マーカーであることから、AsA欠乏は肝臓での炎症様変化を引き起こすことが示唆された。続いて、AsA欠乏時にはAPPs発現を誘導する転写因子であるsignal transducer and activator of transcription 3 (STAT3)の活性化(リン酸化)が亢進していることも明らかとなった。STAT3は炎症性サイトカインであるinterleukin-6(IL-6)により活性化される。最近、我々はAsA欠乏は腸管でのIL-6 mRNAレベルの上昇と門脈血IL-6濃度の上昇を引き起こすことを示した。これらの結果から、AsA欠乏によって腸管で産生上昇したIL-6が門脈血を介して肝臓に作用してSTAT3を活性化してAPPs発現を上昇させることが推察される。さらに我々は、AsAの抗炎症効果の検証を試みた。炎症のモデル系としてはリポ多糖(LPS)誘導性敗血症を用いた。AsA無添加食、AsA 300mg/kg添加食、あるいはAsA 3,000 mg/kg添加食を摂取したODSラットにLPSを投与(腹腔内注射)した結果、AsAの摂取は用量依存的に敗血症における生存率を著明に改善し、組織の炎症性障害も抑制した。
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© 2020 日本ビタミン学会

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