抄録
植物はアスコルビン酸を豊富に含んでおり、我々ヒトにとってビタミンCの重要な供給源である。近年、植物におけるアスコルビン酸の生合成は、GDP-D-マンノースからL-ガラクトースを代謝中間体とするD-マンノース/L-ガラクトース(D-Man/L-Gal)経路を主要経路としていることが明らかにされた。さらにD-Man/L-Gal経路構成酵素の中でもGDP-L-GalホスホリラーゼをコードするVTC2遺伝子の発現制御は、光に応答したアスコルビン酸生合成調節の鍵を握っていることが示された。またD-Man/L-Gal経路以外に、イチゴやトマト果実のような一部の限られた組織においては、D-ガラクツロン酸を代謝中間体とする経路がアスコルビン酸供給を担っている可能性も示唆されている。なぜ植物がアスコルビン酸を豊富に含むのか、その理由を解明するための基礎的知見が整ってきた。