ビタミン
Online ISSN : 2424-080X
Print ISSN : 0006-386X
生活習慣病リスクとしての脂溶性ビタミン不足の 意義に関する臨床的研究(特集「ビタミン・バイオファクター研究の新潮流」 (第 72 回大会 若手シンポジウム))
桒原 晶子中津 由香
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2021 年 95 巻 7 号 p. 315-321

詳細
抄録

脂溶性ビタミンが種々の生活習慣病に関係することが報告されているが、わが国おける臨床研究は乏しい現状にある。本稿では我々がこれまでに行ったビタミンEおよびビタミンKの成果について紹介する。ビタミンEでは、ビタミンE摂取三分位の低値群に比して、中、高値群では高血圧症の有病割合が有意に低かった。次に横断研究にて、血清ビタミンE(α-トコフェロール)濃度と動脈硬化性疾患リスク因子数との関係を検討したところ、血清αT濃度は欠乏レベルを下回る者は存在しなかったが、多変量解析により血清αT濃度の総脂質補正値は動脈硬化性疾患リスク因子数に負の寄与を示した。
ビタミンKは、成人では欠乏しにくいとされているが、摂取量および体内での産生の双方が低下する事で不足する可能性がある。そこで、重症心身障害者を対象に肝臓(血液凝固)ならびに骨での作用不足の指標を用い、ビタミンK不足の要因について検討した。その結果、経管栄養適用かつ長期的な抗生物質の服用を伴う場合に、より肝臓および骨でのビタミンKが不足しやすいことが示唆された。そこで、経管栄養適用者にビタミンK1の3か月に亘る介入をしたところ、肝臓および骨でのビタミンK不足指標のみならず、骨代謝指標も有意に改善された。
以上より、ビタミンE、Kは欠乏レベルには至らなくとも、それより軽度の不足レベルでも疾患リスクとなるが、これらの疾患への影響を検討するには、観察研究のデータも含め蓄積することも重要である。

著者関連情報
© 2021 日本ビタミン学会

この記事はクリエイティブ・コモンズ [表示 - 非営利 - 改変禁止 4.0 国際]ライセンスの下に提供されています。
https://creativecommons.org/licenses/by-nc-nd/4.0/deed.ja
次の記事
feedback
Top