抄録
線虫(Caenorhabditis elegans)は生命現象を理解するためのモデル生物として,生物学や遺伝学など幅広い研究分野で用いられている.本生物は生命現象に係る分子機構や細胞内代謝において哺乳動物と多くの共通点を持つ.また,線虫は多くのヒト疾病関連遺伝子のホモログを有していることからも,ヒト疾患モデルとしての活用が期待されている.これまでの研究において,線虫はヒトと同様に正常な生育にビタミンB12を要求することを明らかにすると共に,この新しいビタミンB12欠乏モデルを活用し未解明な部分が多いビタミンB12欠乏症の発症機構について解析してきた.本稿ではビタミンB12欠乏線虫を用いて見出したビタミンB12欠乏症の発症機構の一端を紹介すると共に,本モデル生物を食品・栄養学的研究に利用する上での利点と欠点について述べる.