2023 年 30 巻 p. 129-144
本稿では、「落語とは何か」を考えていくうえでの足がかりを作るべく、先行研究の論考を整理しつつ、現代の落語の変化について考察する。 本稿では落語という芸の性質を考察した論考を三本取り上げた。その結果、落語は、落語家と客との予想以上に複雑な関係性によって成り立っていることが分かった。桂米朝の「演者が消滅するという演法」、野村雅昭の「はなし」の二重構造性、及び落語の構造モデル、そして野村亮太の「メタ・コミュニケーション」と「メタ発話」という概念は、現代の落語を考えるうえで、非常に有用と考える。今後は、時代背景の視座も含め、共時的かつ通時的に、落語を取り巻く環境を考慮に入れた分析が必要になってくるだろう。