雑草研究
Online ISSN : 1882-4757
Print ISSN : 0372-798X
ISSN-L : 0372-798X
原著論文
農村地域における水生植物の生育地の水質
小林 浩幸山本 眞國弘 実
著者情報
ジャーナル フリー

2006 年 51 巻 3 号 p. 133-138

詳細
抄録

17都県, 106市町村の農村的な景観を示す合計263地点で, 水生植物の分布と水質の関係を調査した。観察された水生植物は22科54種であった。これらの水生植物の生育地の水質は大きく変動する種もあったが, 生育型ごとにいくらかの傾向がみとめられた。すなわち, 栄養塩類を除く多くの水質項目について, 生育地の水質の中央値は抽水植物では相対的に汚濁した側に, 沈水植物では良好な側にあった。栄養塩類については, 良好な水質の場所で多くみられた種の生育地で濃度が高い場合がしばしばあった。水質が良好な側にはどの種も分布に制限がなかった。さらに, 112地点を対象として水質と水生植物の分布の対応関係を明らかにするため, 正準対応分析 (CCA) を試みた。分析結果から, 沈水植物では透視度やDOなどとの結びつきが, ヨシ, マコモなどの抽水植物では有機物による汚濁を示すCOD, BODや, SS, EC, Cl-との結びつきが認められた。オオアカウキクサなどではNOx-Nとの結びつきが認められた。複数の水質項目を総合的に分析することで, 水生植物の生育地の水質について, より明瞭な結論が得られることが示唆された。

著者関連情報
© 2006 日本雑草学会
次の記事
feedback
Top