雑草研究
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3-Phenoxypyridazine 系化合物のオーキシン阻害作用
竹内 安智近内 誠登竹松 哲夫田村 三郎
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1972 年 1972 巻 13 号 p. 37-42

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抄録

3-phenoxypyridazine 誘導体のオーキシン阻害力を Raphaus test B 法 (細胞分裂力測定), Raphanus test A 変法 (細胞伸長力測定) および Avena straight growth test により測定した。供試3化合物は, いずれも強力なオーキシン阻害作用を示した。
また, オーキシン過剰によるダイコンの生長阻害は低濃度の 3-phenoxypyridazine 誘導体により回復し, 逆に 3-phenoxypyridazine 誘導体によるダイコンの生長阻害は低濃度のオーキシン活性物質により回復が可能である。しかし, 両者の高濃度の組合わせにより, 生長阻害は増大する。また, 頂芽優勢打破現象もみられることから, 本系列化合物はオーキシンと密接な関係にあることがうかがわれる。
このようなオーキシン阻害作用, 頂芽優勢の喪失現象は, MHについて CURRIER, JONSON, LEOPOLD & KLEINらにより報告されている。また, 2,4-D, 2,3,6-TBAは carbamate 系の barban の作用を阻害することを PFEIFFER らが明かにしており, KEITTはオーキシン誘起のタバコの細胞伸長がIPC, CIPCにより阻害されるとし, C. S. JAMES らは, 2,4-D, dicamba あるいは picloram は, CIPC, EPTC, barban などの carbamate によりダイズの下胚軸の伸長, 屈曲が阻害されることを報告している。さらに PRENDEVILL らは, 2,4-D, 2,4,5-Tあるいは dicamba と carbamate 系のEPTC, CDECの組合わせが Sorghum, giant foxtail には拮抗的であり, 2,4-D+Alanap でも同様であることを報告している。
3-phenoxypyridazine 系化合物は, MHと比較すると, その選択性はイネ科植物に強力な阻害作用を示す点で類似するが, 広葉植物に対してMHはほぼ非選択的であるのに対し, 3-phenoxypyridazine 系化合物は科によって阻害程度か異なり, 特にMHがトマトに大きな被害を与えるのに対し, 3-phenoxypyridazine 類は全く無害であり, 選択性に大きな相違がみられる。
また本系列化合物は, コハク酸脱水素酵素の活性を1,000ppmでやや抑制する程度であり, 同様に呼吸阻害も割合少なく, これらはMHのそれと全く逆の生理作用である。
MHのオーキシン阻害作用について CURRIER & LEOPOLD は bean plant の上胚軸を用い, オーキシンの移行がMHにより阻害されるためだとしている。ANDREAE らはMHはIAAの酵素分解を促進するとした。また, C. S. JAMESは2,4-D処理によるアオビユ, サナエタデの屈曲反応がCIPCで阻害される現象をラジオアクティブの両剤を用いてCIPCによる移行阻害, 分解などによるものでないことを明らかにしている。
以上のように, オーキシン阻害作用は現象的には類似しているが, 作用機作は異なっている。3-phenoxypyridazine 系化合物のオーキシン阻害作用の生理的, 組織的解明は現在研究中であり, いずれ他の機会に報告する。

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