雑草研究
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除草剤5-アルキルチオ-6-クロルピリミジンの作用機作と構造活性相関
榎本 祐司船越 安信藤田 高北條 祥賢河本 展夫
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1983 年 28 巻 3 号 p. 172-178

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抄録

1. 作用機作
5-アルキルチオ-6-クロルピリミジン誘導体の作用機作は, Hill 反応阻害と考えられた (Table 1)。また, これらの誘導体のいくつかは, アトラジン (2-クロル-4-エチルアミノ-6-イソプロピルアミノ-1, 3, 5-トリアジン) よりも強い Hill 反応阻害活性を示した。ポット試験での除草活性と Hill 反応阻害活性との間には, Spearman の順位相関係数Rsで0.85と相関が認められたことからも, 除草作用は Hill 反応阻害によるものと考えられた。
2. 構造活性相関
Hill 反応阻害には, ピリミジン環の4位がアミノ基であることが重要であった。2位の置換基に関しては, モノアルキルアミノ基が適当であり, アルキルの大きさについては, エチルが最も強い活性を示した。5位のアルキルチオ基に関しては, 2位のアルキルアミノ基の炭素数によって, 5位のアルキルチオ基の炭素数と Hill 反応阻害活性との関係が若干変化した (Table 1)。
除草活性と2位の置換基の相関について, 4-アミノ-6-クロル-5-メチルチオピリミジン誘導体について検討した結果, メチルアミノ基, エチルアミノ基のような, Swain-Lupton のF定数がマイナスの置換基は活性が強く, ジメチルアミノ基, クロル基, メトキシ基等のF定数がプラスの置換基は活性が弱かった。この相関係数Rsは, 0.88であった (Table 2)。
3. 選択性
小麦の2葉期に, DATP (化合物No. 1=6-クロル-2, 4-ジアミノ-5-メチルチオピリミジン) と化合物No. 3 (4-アミノ-6-クロル-2-エチルアミノ-5-メチルチオピリミジン) を処理し, 小麦の光合成能を追跡した。その結果, 見かけの光合成 (CO2収支) は1日で回復し始めた (Fig. 1)。
大麦の3, 5, 7の各葉期にDATPを処理したところ, 小麦と同様に, 見かけの光合成能は1日で回復し始めた。また, 最も若い3葉期が最も強い阻害をうけたが, 回復は最も早かった (Fig. 2)。ビール麦についてもほぼ同様な傾向が認められた (Fig. 3)。
このようにこれらの穀類は, その光合成を阻害されても回復することから, 何らかの解毒機構を有すると考えられた。

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